日本に住んでいると、戦争やテロといった脅威は自分とは無関係なことだと思うこともあるかもしれません。
しかし、ただ日常生活を送っているだけで突然爆殺されてしまうような事件が、現代にはあるのです。
今回紹介する映画「パトリオット・デイ」では、2013年に実際に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件が描かれています。
ノンフィクション映画に定評があるピーター・バーグ監督の作風と、テロリズムの歴史背景を抑えながら、映画の見どころを2つ解説してみました。最後までご覧いただけると幸いです。
(トップ画像出典:http://www.patriotsday.jp/)
「パトリオット・デイ」とは?
- 公開日:2017年6月9日
- ジャンル:ノンフィクション
- 上映時間:133分
- 監督:ピーター・バーグ
- 主演:マーク・ウォールバーグ
「パトリオット・デイ」は、2013年に実際に起きた事件、ボストンマラソン爆弾テロ事件を描いたノンフィクション映画です。
ボストンマラソンとは、「愛国者の日」にちなんで毎年開催されるイベントのことを言います。
アメリカ独立戦争が開始した4月19日を「愛国者の日」とし、それを記念して毎年4月の第3月曜日に開催されています。
「パトリオット・デイ」のあらすじ
ボストン警察の巡査部長、トミー・サンダース(マーク・ウォールバーグ)はボストンマラソンの警備任務に就いていました。
完走者が何人か出始めたころ、観客のいる道路で突然爆発が発生。現場は大混乱に陥り、楽しかったはずのイベントは一気に地獄へと変化しました。
トミー・サンダースはFBIとも協力しながら、爆発を起こした犯人を捜していきます。
実際に起きた事件を描いていますが、トミー・サンダースや警察、FBIの方々はどのようにして犯人を特定し、事件を解決させたのでしょうか?
2013年4月15日。毎年4月の第3月曜日「パトリオット・デイ」(愛国者の日)に開催されるボストンマラソンの最中に、爆弾テロ事件が発生する。会場の警備にあたっていたボストン市警察殺人課刑事のトミー・サンダースは、爆発の直後から必死に警察無線で状況を報告しながら、仲間と共に救護活動を行う。
やがて、FBIの指揮で捜査が始まり、FBI特別捜査官のリック・デローリエは事件をテロと断定。ボストン警察との合同捜査の末、監視カメラに映っていた「黒い帽子」と「白い帽子」の2人の男が容疑者として浮かび上がる。犯人に対し激しい怒りを抱えるトミーは、すぐに2人の顔写真を公表すべきと主張するが、決定的な証拠を得られないことからリックは公表を許可せず、市民からの情報を募る。
ところが、民間の調査機関や報道機関などが全くの別人を犯人とした情報を流し始め、混乱が拡大したことから、リックは「黒い帽子」と「白い帽子」ことタメルラン・ツァルナエフとジョハル・ツァルナエフの顔写真を公開する。テレビで自分たちの情報が報道されていると知ったタメルランは、ジョハルを連れて自宅を去り、さらなるテロを行うためニューヨークへ向かおうとする。
なお、今回マーク・ウォールバーグが演じているトミー・サンダース巡査部長は作品のオリジナルのキャラクターで、実在はしていません。
「パトリオット・デイ」の出演キャスト
実際に起きた爆弾テロ事件を描いた「パトリオット・デイ」。ここからは出演キャストの方々を紹介していきます。
マーク・ウォールバーグ/トミー・サンダース巡査部長
「TED」や「トランスフォーマー」シリーズで有名な俳優。監督のピーター・バーグとタッグを組むのは今作で3回目になります。
ケビン・ベーコン/リチャード・デローリエFBI捜査官
FBIと言えばこの人、ケビン・ベーコンです。ドラマ「ザ・フォロイング」でのFBI役が評価され、また、「激流」ではゴールデングローブ賞にノミネートされています。
ジョン・グッドマン/エド・デイヴィス警視総監
ベテランでありながら「アルゴ」、「10クローバーフィールド・レーン」、「キングコング:髑髏島の巨神」など近年の人気作にも出演している名俳優です。
J・K・シモンズ/ウォータータウン警察巡査部長
「ラ・ラ・ランド」にも出演、また、「セッション」で見せた教師・フレッチャー役の演技は、見た人の誰の心にも残る印象的なもので、高く評価されました。
ミシェル・モナハン/トミーの妻
「ミッション:インポッシブル」ではトム・クルーズの妻役を演じていることで有名な実力派女優です。
「パトリオット・デイ」の主演、マーク・ウォールバーグとは?
マーク・ウォールバーグは今でこそトップ俳優としての人生を歩んでいますが、少年時代はとんでもない不良だったことをご存じでしょうか?
9人兄弟の末っ子として生まれた彼は、貧乏な過程でかなり荒んだ生活をしていました。映画にも登場するボストン警察には何十回も世話になっていたと言います。
高校卒業後は定職に就かず、ドラッグ・暴力に明け暮れた生活を送っていました。殺人容疑で起訴されたことまであるぐらいです。
そんな彼はあるきっかけから俳優の道を歩み始め、現在ではご存じの通り大スターになっています。マーク・ウォールバーグのことが気になった方はぜひこちらの記事も併せてご覧いただけると幸いです。
ピーター・バーグ監督の作風
「パトリオット・デイ」の監督を務めたのはピーター・バーグという方です。「ローン・サバイバー」や「バーニング・オーシャン」「マイル22」などノンフィクションの映画を作ることで定評があります。
「ローン・サバイバー」、「バーニング・オーシャン」、「マイル22」では、いずれもマーク・ウォールバーグが主演を務めている。
テロや爆発事故など、悲惨な現実をリアリティにこだわって映画を製作するところが特徴的な人物です。
「ローン・サバイバー」でも見られますが、映画の最後には被害者の実名を出して追悼の意を表明することで作品を締めくくっています。
次の章からは、そんなリアリティにこだわるピーター・バーグ監督の作風に基づいた見どころを紹介していきます。
「パトリオット・デイ」の見どころ①捜査方法
「パトリオット・デイ」で明らかにされたのは、ボストン警察とFBIの厳格な捜査体制です。
彼らは事件現場から証拠品を集めた後、その証拠品を倉庫内で事件当時の街と全く同じ配置に並べ直すという大規模な捜査方法が取られました。
事件現場を細部までシミュレーションすることで犯人がどこにいたか徹底的に考察したのです。
これほどまでに詳細に、徹底的に犯人を特定しようとする警察、FBIの姿勢を明らかにしたこの映画の功績は大きいでしょう。
FBIと地元警察との協力
また、FBIと地元警察の協力関係が描かれたのも、他の映画ではなかなか見られない特徴です。
FBIはその権力を利用し、地元警察の捜査を掌握してしまうことが多いため、両者の関係は険悪なものとして映画では描かれがちです。
しかし、「パトリオット・デイ」では、FBIの持つ膨大なデータベースと、地元警察の持つ土地勘とをすり合わせるような協力体制が取られました。
1つの脅威に対して、肩書きなど関係なくあらゆる人たちが団結していった事実を描いていることが、とても魅力的に感じました。
「パトリオット・デイ」の見どころ②力強く生きる市民たち
「パトリオット・デイ」は、一般市民と被害者の方々にスポットを当てているのが特徴的な作品です。
特に、身体に障害を負うほど重傷を負った被害者が、事件後には前向きな人生を歩んでいる姿を描いているところが評価されました。
死者、手足を切断するほどの重傷者を出すほどの被害を受けた事件でしたが、テロの脅威に対してボストン市民全員が一丸となれたことを大いに讃えています。
映画の最後には亡くなってしまった方々への追悼文が流されました。被害者、そして事件を乗り越えた方々への敬意が強いメッセージとして感じられる作品です。
なぜテロが起きるのか?「パトリオット・デイ」の伝えた脅威
ボストンマラソン爆弾テロ事件の首謀者はいわゆるイスラム過激派と呼ばれるようなイスラム教信者でした。
なぜイスラム過激派とアメリカは対立しているのか、ここからはその理由を明らかにする歴史を紹介していきます。
タリバンの誕生
イスラム過激派の誕生は、タリバン政権の誕生にまでさかのぼることができます。タリバン政権は、内戦が続くアフガニスタンを統一に向かわせた組織でした。
しかし、ある程度治安が回復すると、イスラム教の教えを過度に厳格に押し付けたり、軍事力を暴走させ始めたりしました。1998年にはアメリカ大使館を爆破するなどし、その凶暴性が明らかになっていきます。
そして2001年にはあの9.11同時多発テロを引き起こしたと言われ、以後、アメリカとイスラム過激派は常に戦争状態にあります。
テロが通常の戦争と違うのは、一般市民が突然襲われることがあるということでしょう。自分の日常が突然壊されてしまう恐怖を「パトリオット・デイ」は的確に表現しています。
「パトリオット・デイ」への感想
「パトリオット・デイ」にはどんな感想が寄せられているのでしょうか?各映画レビューサイトを覗いてみました。
- Yahoo!映画―3.94
- 映画.com―3.8
- Filmarks―3.9
この緊迫感と死と隣り合わせな感じがピーター・バーグ。
マラソンの応援って確かに荷物検査とかないんだよな。スタジアムとかではないし。
日本もオリンピックで強化をしなければね。
そして警察、FBIの捜査は早い。さすがは世界の警察ことアメリカ。
アメリカvsテロ組織の構図。
自由は奪わせない。
「ボストン、強くあれ」は響きました。脚を失っても、身内を亡くしても前を向くところなどアメリカ人はハートが強い。
そしてマーク・ウォールバーグは決して死なない。弾が当たらない。強運。
見る価値は十分にあるでしょう。
(出典:https://filmarks.com/movies/54711)
この方がおっしゃるように、日本も2020年の東京オリンピックに向けて対策が必要ですね。
ボストンマラソンの無差別テロ事件を扱った「ダブルバーグ」の映画。
マーク・ウォールバーグ扮する警官は警官としてやるべきこととそれ以上の働きをして事件解決のために動くドキュメンタリー風ドラマ仕立て。
ダブルバーグの映画は「バーニングオーシャン」も観たけど、こちらもかなり「事件の経緯」にこだわった作り。
事実を元にしてるからどうしてもこういった構成になってしまうんだろうけど、ケヴィン・ベーコンやJ・Kシモンズやジョン・グッドマンといった錚々たる演技派のキャスティングが、果たして本当に必要だったかどうか?
と思うくらい、せっかく揃えた名優の演技が捉えられてないのは、もはやピーター・バーグの映画の特徴と思えてしまう。むしろこの作品の見どころはそこではなく、あまり知られていない「テロリスト側」の描写がかなり克明に描かれていたこと。
特にテロ犯が捕まり、実行犯の妻が尋問されるシーンでの、イスラム教徒の女性捜査官とのやりとり。
捜査官も自分が信じる神であり、犯人達もその信じる神の教義に従って行動しているという確固たる信念に基づく犯行のため、犯人の妻を落とせなかった場面。
ここが、ピーター・バーグは実は一番見せたかったのではないか?
「イスラム教の洗脳が怖い」という意見が出ていたが、果たしてそんな単純なことだろうか?
元はといえば、ブッシュ政権時代からのアメリカの中近東への圧力が原因の、イスラム圏のアメリカ嫌いが端を発した溝の深さがある。そしてこの「無差別爆弾テロ」という卑劣な犯罪行為のやり方をイスラム圏の人達に教えたのは、元は私達と同じ日本人の過激派テロリストである、という事実を忘れてはいけない。
日本でも、エリート頭脳を持つ人間が地下鉄にサリンを撒くテロを起こしている。それはイスラム教でもキリスト教でもない、たまたま狂った教祖気取りの人間の狂った復讐心だっただけで、犯罪内容は変わらない。
宗教が人間を洗脳しているわけではない。
犯罪行為やテロ行為を正当化するために、悪意を持った人間が、宗教を利用しているだけで、宗教が悪いわけではない。だから、イスラム教徒だろうが、キリスト教徒だろうが、その他の宗教だろうが、そこは問題ではないのは、人種も国も性別も関係ないのと同じだ。
犯罪やテロは、映画の中やテレビの中や海の向こうの国の話ではなく、いつ自分達が、加害者または被害者になり得る現実である、ということを考えていたい。
(出典:https://filmarks.com/movies/54711)
やはり映画で描かれていることが事実であることに衝撃を受ける方が多いようですね。
また、テロリスト側の描写も細かいことが評価ポイントのようです。単にテロを悪として描くのではなく、なぜテロが起きるに至ったか?という経緯に着目して描かれているところも魅力的な映画です。
まとめ
以上、実際に起きたボストンマラソン爆弾テロ事件を描いた映画「パトリオット・デイ」について解説してきました。
我々一般人が巻き込まれうるテロの脅威と、それに立ち向かうために団結した市民の姿を描いています。
最後に、「パトリオット・デイ」を視聴できるVOD(ビデオオンデマンドサービス)をまとめておきました。
今回の記事を読んで「パトリオット・デイ」が気になった方はぜひ視聴してみてください。
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