イギリス、アメリカ、ドイツの3か国共同で製作された「リリーのすべて」。世界で初めて性別適合手術を行ったリリー・エルベを題材にした映画です。
LGBTという言葉が広く知れ渡るようになり、自分の在り方の多様性が出てきた2019年だからこそ見て欲しい作品です。
(トップ画像出典:https://twitter.com/lili_movie/status/717517235720335360?s=20)
リリーのすべての作品情報
リリーのすべては、2015年にイギリス・アメリカ・ドイツの共同で製作された映画です。(原題:The Danish Girl)
監督は「レ・ミゼラブル」や「英国王のスピーチ」の指揮を執ったトム・フーバーが、脚本は「ルシンダ・コクソン」が務めています。
原作はデヴィッド・エバーショフの「世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語」です。映画の公開に合わせて「リリーのすべて」というタイトルで、再出版されています。
旦那が女性に変身⁈リリーのすべてのあらすじ
舞台は1926年のデンマーク。肖像画家の妻・ゲルダと、風景画家の夫・アイナーの物語です。
ある日、ゲルダが描いていた女性ダンサーのモデルが来れなくなり、急遽アイナーに脚部のモデルを頼みます。
ゲルダは冗談半分で夫に女装をさせて、その姿を「リリー」と呼びます。アイナーは女装をしたことによって、自分の中に女性の存在があることに気づくのでした。
ゲルダが知人のパーティーに女装したアイナーと出掛けると、彼が男性と親し気に話す姿を目にしました。そして、どんどんリリーとして過ごす時間が増えていく旦那に当惑していきます。
パーティーで出会った男性と密会するアイナーを医師に診て貰いましたが、「精神疾患」という扱いしか受けませんでした。
何も解決しないまま、ゲルダの絵に対する引き合いを機に2人はパリに移ります。すると、今までとは違う診断結果を出す医師がアイナーの前に現れます。
彼は「アイナーは正しい」と言い、性別適合手術を受けるように勧めました。アイナーは手術を受ける決意をし、女性として生きる為に先例のない手術を受けるのでした。
リリーのすべての登場人物
リリーのすべてに登場する人物について、写真付きでご紹介します。
アイナー・ヴェイナー(リリー)
アイナー役は「ファンスタスティック・ビースト」でニュートを演じた、エディ・レッドメインです。
1枚目の写真はアイナーとしての姿であり、2枚目はリリーとしての姿です。
イギリス生まれの俳優であり、1982年生まれの37歳です。(2019年5月現在)身長は184㎝あり、リリー姿の時はスラっとした体形のため、綺麗な女性といった趣きです。
ゲルダ・ヴェイナー
ゲルダ役は「エクス・マキナ」でエヴァを演じた、アリシア・ヴィキャンデルです。スウェーデンの女優であり、1988年生まれの30歳です。(2019年5月現在)
リリーのすべては実話を元にしていた⁈時代背景を紹介!
リリーのすべては、世界で初めて性別適合手術を受けた「リリー・エルベ」をモデルにした作品です。映画は史実を基に脚色されており、エルベが女性として暮らすようになった時期や結末は実際とは異なります。
ですが、当時のLGBTに対する考えは映画で描かれている通り、風当たりの強いものでした。彼が生きた時代は、LGBTがどのような扱いを受けていたのか説明します。
デンマークにおけるLGBTの扱い
デンマークでは1989年に世界で初めて「登録パートナーシップ法」を導入しました。LGBTの平等に関して世界でも先進国であるデンマークですが、1920年時代は考えが異なっていました。
1950~60年代は男性が男性をお金で買うところを見つかると、警察に逮捕されてしまう程LGBTに対して理解がありませんでした。
1926年に関する資料は見つかりませんでしたが、30年後の1950年代でも男性同士が交わりをする事で、捕まってしまうので風当たりの強さは想像出来ます。
フランスにおけるLGBTの扱い
ゲルダとアイナー夫妻は、パリに引っ越しますがフランスではLGBTをどのような扱いをしていたのでしょうか。
調べてみると1750年に、男性同士で性的行為を行っているところを現行犯で見つかり、火あぶりの刑に処せられた事件がありました。
上記の事件は、同性愛者に対する風当たりの強さを示す事件であり、実際の性別と自分が思う性別の違いに苦しむ彼とは少し異なるかもしれません。
ですが、世間の中では少数派であるLGBTに対する風当たりの強さは、この事件からも分かるのではないでしょうか。
そもそもLGBTとは?
当作品の主人公であるアイナー(リリー)は、実際の性別と自分が思う性別が違うため苦しんでいました。
その為、LGBTという言葉を使用していますが、そもそもLGBTとは何なのか分からない人もいますよね。なので、LGBTとは何なのか説明します。
LGBTとは、レズビアン(女性の同性愛者)・ゲイ(男性の同性愛者)・バイセクシャル(両性愛者)・トランスジェンダー(出生時の性と、自認する性が異なる)を指しています。
アイナーの場合は、上記の「トランスジェンダー」に当たります。
リリーのすべての見どころ
リリーのすべてが気になってきたという方に向けて、見どころを紹介します。
エディ・レッドメインの役作り
主演のエディ・レッドメインは、役作りの為にトランスジェンダーの女性に取材をしたそうです。
そして取材を元にアイナーが誰なのかということを掘り下げていき、”女性性”だけでなく”男性性”も探求し役作りに反映しました。
その事を知った上で、彼の演技を見るとまた違った見方が出来ると思います。
美術セット
美しい美術セットも、当作品の見どころです。アイナーとゲルダ夫妻が暮らす部屋のインテリアは細部までこだわっています。
デンマークの家では女性性を抑えていたアイナーの心情を反映しているのか、色彩も抑えられている暗い部屋となっています。
それに比べパリの家では本当の自分を解放したからなのか、インテリアも色彩豊かになっています。
リリーのすべての受賞歴
リリーのすべては様々な賞を受賞していますので、それらについて説明します。
賞 | カテゴリー |
---|---|
ベネツィア国際映画賞 | クィア獅子賞 |
第19回ハリウッド映画賞 | 監督賞・ブレイクアウト女優賞・作曲賞 |
第15回ニューヨーク映画批評家オンライン賞 | ブレイクスルー賞 |
第22回全米映画俳優組合賞 | 助演女優賞 |
第20回サテライト賞 | 助演女優賞 |
第88回アカデミー賞 | 助演女優賞 |
エンパイア賞 | 女優賞 |
上記は受賞したものであり、ノミネートも合わせるとさらに多くなります。
リリーのすべてのレビュー
リリーのすべは沢山の賞を受賞していますが、実際見た人の感想が気になりますよね。なので、レビューについて紹介します。
今から90年以上前の世の中では、性同一性障害など理解されるはずもなく。もちろん、今でも家族や周りの人に理解してもらうのは、簡単なことではないけど。
リリーの苦悩やゲルダの悲しみ、2人の性別を超えた愛。同じ苦しみを抱えている人に勇気を与えてくれる映画。
出典:https://eiga.com/movie/82988/review/
心の有り様としては、ゲルダの生き様の方が自分としてはちょっとすごいと感じた。夫としての彼を愛していた時間を全否定されるようなことをされているし、妻として夫に支えて欲しいという欲求もあるのに、それを全て横に置いてリリーに献身した。
愛にも色々な形があるんだろうけど、同じ相手同士でもここまで変化するのはすごい。
出典:https://eiga.com/movie/82988/review/
リリーのすべてではアイナーの苦しみだけでなく、ゲルダの苦しみも上手く描かれていくことが分かります。
トランスジェンダーが今よりも理解されていない時代に、自分の性について苦しんだアイナー。
夫がどんどん女性になっていく様を、支えながらも昔とは変わっていくアイナーの姿に苦しむゲルダ。
アイナーの苦悩が解決していくことで、今度はゲルダが苦悩していきます。しかし、アイナーとゲルダは変わらずお互いを愛していることが分かりますね。
原作者「デヴィッド・エバーショフ」とは?
原作者の「デヴィッド・エバーショフ」は、1969年のアメリカ生まれの作家・編集者・教師です。
当作品の原作である「世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語」が初めての作品であり、ローゼンタール財団賞・ラムダ文学賞を当作品で受賞しました。
その他、ニューヨーク国立図書館のヤング・ライオンズ賞やアメリカ図書館協会賞の最終選考まで残っています。
2002年には短編小説の最初のコレクション、「パサデナ」、2009年には「19人目の妻」を出版しています。
「リリーのすべて」まとめ
リリーのすべては、デヴィッド・エバーショフの「世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語」を原作にした映画です。
LGBTがまだ理解されていなかった1926年のデンマークが舞台の作品であり、トランスジェンダーであるアイナーとその妻・ゲルダの苦悩を描いています。
実話が元になっていますが、この「リリーのすべて」では脚色をしており、アイナ―が女性になった時期や結末は事実とは異なっています。