今回は、映画『ランボー』の魅力と映画の背景知識を取り上げます。『ランボー』というタイトルを聞いて、「アクションシーン満載の映画では?」と思う人もいるでしょう。
確かにストーリーを見ると、シルベスター・スタローンのアクションが多いので、そのようなイメージがあるのも当然でしょう。映画を見る時は、ランボーの背景を知ると、深く理解しやすいです。
この記事では、ベトナム戦争の帰還兵がどのような待遇を受け、後遺症を抱えたのかについても解説します。映画を見る前に『ランボー』の予習をしたい人はぜひ読んでみてください。
(トップ画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/3168809?title=%E8%BB%8D%E9%9A%8A4)
『ランボー』の概要
シルベスター・スタローン主演の『ロッキー』と並ぶ代表作『ランボー』。『ランボー』シリーズは迫力満点なアクションシーンが満載ですが、その魅力は第一作目から発揮されています。
- 公開:1982年12月18日
- 上映時間:92分
- 年齢制限:15歳以上
- シリーズ:ランボー怒りの脱出/ランボー3怒りのアフガン/ランボー最後の戦場/ランボーラスト・ブラッド
- 原作:デイヴィッド・マレル『たった一人の軍隊』
- 原題:First Blood
- 主演:シルベスター・スタローン
日本では『ランボー』という題名が有名ですが、元々の題名は「First Blood」=「最初の血」です。先に流血を招いた側→先制攻撃という意味でスポーツでよく使われるようです。
この作品でランボー=シルベスター・スタローンというイメージが定着し、2019年までシリーズが続きました。
『ランボー』の出演俳優
『ランボー』に出演する俳優は、『ロッキー』で一躍有名になったシルベスター・スタローン以外にもゴールデングローブ賞を受賞したリチャード・クレンナも登場しています。
シルベスター・スタローン(ジョン・J・ランボー役)
ベトナム戦争の帰還兵。たまたま立ち寄った町で不審者と疑われてしまい、ティーズル保安官から虐待を受ける。特殊な訓練を受けており、戦場での経験をフルに活かして警察数千人に1人で立ち向かう。
リチャード・クレンナ(サミュエル・トラウトマン大佐役)
ランボーの元上司で、過去を知る人物。ランボーとティーズル保安官の対決を知り、ランボーを止めるために町に向かう。このあと続編に登場し、ランボーにたびたび任務を依頼している。
ブライアン・デネヒー(ティーズル保安官役)
ランボーが立ち寄った町の警察署長。朝鮮戦争の帰還兵。他所から来たランボーを虐待したが警官が返り討ちにあい、プライドを傷つけられたため、どうにかしてランボーを殺害しようとする。
『ランボー』のあらすじ
ジョン・ランボーはベトナムの帰還兵で、本国に帰国後友人を訪ねていた。友人は戦争の後遺症で亡くなっており、ランボーは近くの町に立ち寄る。
その町の警察署長であるティーズル保安官は、ランボーを浮浪者と見なし警察署に拘留し虐待をした。抵抗しないランボーに警官が彼の髭を剃ろうとしたとき、彼は戦争の記憶を思い出し、周りの警官を倒して逃走する。
ティーズルはランボーに敵対心を持ち、警官と武器を大量投入して彼を追跡するが、あっという間に突破されてしまう。アメリカ全土にこの騒動が広まり、報道陣が町に集まってくる。
ティーズルの元に、ランボーの元上司であるトラウトマン大佐が現れ、ランボーの過去を話す。トラウトマンは「特殊な訓練を受けているランボーには勝てない。」とティーズルを説得するが…。
原作のデイヴィッド・マレル『たった一人の軍隊』
映画『ランボー』には原作があることをご存知でしょうか。デイヴィッド・マレル作の『たった一人の軍隊』が『ランボー』の原作です。
デイヴィッド・マレルはホラー小説家ですが、デビュー作品は『たった一人の軍隊』です。彼の作品は、過去に24作品が翻訳されて出版されました。最近の作品は翻訳されていないようです。
ランボーシリーズは、デイヴィッド・マレルが執筆しており、『ランボー3怒りのアフガン』まで日本語訳があります。原作と映画ではランボーのイメージが異なり、映画を見た後に読むとギャップがあるかもしれません。
原作では、ランボーがベトナム戦争から帰還した後の「孤独」や周囲から受けた「差別」に対する心情が詳細に表されています。
原作と映画『ランボー』の違い
原作と映画の『ランボー』はストーリーはほぼ同じですが、一部展開が異なる部分があります。
例えば警官とランボーの戦闘シーンでは、ランボーは原作では敵対する警察官や民間人関係なく殺害しています。一方で、映画では事故で無くなった1人を除いて誰も殺害していません。
また、作品のラストシーンも異なっており、ネタバレになるので詳細は避けますが、原作の方は悲しい結末になります…。トラウトマン大佐との最後のシーン、ランボーがどうなるのか実際に映画を視聴して確かめてください。
ちなみに個人的な印象ですが、映画ではシルベスター・スタローンのセリフが少ないため寡黙な元兵隊に見えます。しかし、原作では元は明るい人だったと思える描写が見られました。
ベトナム戦争の帰還兵が受けた差別
ランボーはベトナム戦争の帰還兵として描かれています。ベトナム戦争は1955年から1975年まで続き、当時冷戦中のアメリカとソ連の代理戦争でもありました。
戦争中にベトナムの民間人が殺害される様子がTVに放送されて、アメリカで戦争を続けることへの批判が高まっていました。そのため、戦争が終わってから兵士は、殺人者として差別を受けることになります。
戦争の最前線で戦った兵士は、政府から支給金を受け取り、工場などで働くことはできても、まともな就職ができずにいました。
さらに、帰還兵は戦争の後遺症に悩まされることになります。『ランボー』でも主人公のベトナム戦争での後遺症が描かれていました。
戦争からの帰還兵の後遺症
ベトナム戦争に限らず、過去の戦争で最前線にいた帰還兵の中には、後遺症を抱える人がいます。映画『ランボー』では、主人公がPTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱えていると思われるシーンがありました。
厚生労働省のホームページによると、PTSDは次のような症状が現れるようです。
PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)は、強烈なショック体験、強い精神的ストレスが、こころのダメージとなって、時間がたってからも、その経験に対して強い恐怖を感じるものです。震災などの自然災害、火事、事故、暴力や犯罪被害などが原因になるといわれています。
(引用:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_ptsd.html)
ランボーが警察に捕まり、髭を剃られようとしたときに、戦争の記憶がフラッシュバックし、必死に抵抗したと考えられます。
帰還兵の後遺症については、第二次世界大戦以降何度も問題となっています。最近では2003年のイラク戦争で、戦地での経験が原因で、うつ病や不眠などに悩まされた兵士が多く、中には自殺する人も…。
ベトナム戦争でも、イラク戦争と同様にPTSDを抱えた帰還兵がいたと推測されています。しかし、現在は戦争の経験者が減り、当時の戦地を知る貴重な語り手がいなくなっています。
現在まで公開されている『ランボー』シリーズ
ランボーの第一弾はアメリカでは、大ヒットとはなりませんでした。しかし、日本では本国よりヒットし、シリーズ第二弾からタイトルに『ランボー○○』と入るように。
- ランボー 怒りの脱出
- ランボー3 怒りのアフガン
- ランボー 最後の戦場
- ランボー ラスト・ブラッド(日本未公開)
シリーズのタイトルに『ランボー』とついている理由は、主演のシルベスター・スタローンが日本の大ヒットにあやかってつけたから、と言われています。本当なのか冗談なのかは不明ですね。
ランボーは2008年公開の『最後の戦場』で終わる予定でしたが、2019年に「ラスト・ブラッド」がアメリカで公開されています。
『ラスト・ブラッド』は日本でも公開予定です。公開前に今までの『ランボー』のストーリーを知りたい場合は、AmazonPrimeでプライム会員の登録をすると毎月500円会費が発生しますが、視聴できますよ。
AmazonPrimeでは、映画のシリーズものの最新作が上映されると、過去の作品が無料で視聴できるようになることが多いです。
『ランボー』の評価・コメント
大ヒットシリーズの第一弾で、高評価がみられました。コメントでは、「別の戦争で帰還した兵士達にも重なる部分がある。」「帰還兵に対する差別がつらい…。」という意見が多く見られました。
- Amazon:4.5点(評価91件)
- 映画.Com:3.7点(評価38件)
- Yahoo映画:4.33点(評価961件)
ベトナム帰還兵への国・国民の冷たさ。帰還兵の悲しみ嘆き。最強の戦士でさえ抗えない状況。ランボーの心の叫びがとても悲しい。
最高のアクション映画であるが同時に非常に悲しい物語でもある。
(引用:https://eiga.com/movie/50609/review/)
続編とは世界観が540度異なり、プラトーン的な流れである。第2次大戦時に、戦場で精神に異常をきたす米軍兵士は後を絶たなかった。硫黄島の傷病兵の大半が精神的なものだったという。
米兵だけではないだろう。日本軍の兵士も同じストレスを抱えていたはずだ。ランボーの最後の慟哭に、復員してきた多くの旧日本軍将兵、すなわち我々の父や祖父が、ひっそりと戦場の苦しみを抱えて戦後を生きていたことに思いを致さざるえないのである。
いや、日本兵に限らず、近代陸戦を戦う兵士なら共通だろう。湾岸戦争やイラク戦争でもPTSDに悩む兵士が後を絶たない。名誉や賞賛では埋め合わせることのできない、深い傷。
一方で、トラウトマンが代表する軍隊は、そこに属した兵士個人の運命をよそに、今日も着々と組織的な活動を続けている。この作品は、今思えば、深い問題提起であったと言えるだろう。
(引用:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%83%BC-%E5%AD%97%E5%B9%95%E7%89%88-%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%B3/product-reviews/B07ZP8DPQ4/ref=cm_cr_arp_d_paging_btm_next_2?pageNumber=2)
ベトナム帰還兵がどういう気持ちでいるのかいまいち感情移入は出来なかったが、逃げ惑うランボーを応援してしまった。
ストーリーがシンプル過ぎて物足りない。最後もあっさり終わって肩透かしくらった。
(引用:https://movies.yahoo.co.jp/movie/24778/review/160/?c=74&sort=lrf)
『ランボー』まとめ
今回はランボーの概要や映画の背景について解説しました。ランボーはシリーズになっていますが、個人的に第一弾は1番メッセージを強く感じる作品でした。
単に反戦を主張するのではなく、戦争に関わった人がどんな待遇を受けたのか、兵士がどんな後遺症を抱えたのかを伝えています。
この映画はアクションの要素も強いですが、映画の背景であるベトナム戦争を知ると、各シーンがより深く理解しやすいです。
『ランボー』=アクション映画と思っているならば、見る前と後でイメージが変わるので、第一弾だけでも見ることをおすすめします。