映画『フォードvsフェラーリ』は、1960年代の伝説的なレースで絶対的王者に立ち向かう男たちの奮闘を描いた”奇跡の挑戦”と言われる実話をもとにした作品です。
実力派俳優のマット・デイモン、そして役作りの天才と言われるクリスチャン・ベールが初共演、しかもダブル主演ということで注目を浴びている映画です。
公開後には約2週間で観客動員数50万人を超え、興行収入が7億円を突破したということで話題にもなりましたね。
そんな映画『フォードvsフェラーリ』の見どころや物語の背景などについて、映画を実際に見た筆者がくまなくご紹介します!
(トップ画出典:https://www.foxmovies.com/movies/ford-v-ferrari)
『フォードvsフェラーリ』の作品情報
- 公開:アメリカ / 2019年11月15日、日本 / 2020年 1月10日
- 監督:ジェームズ・マンゴールド
- 脚本:ジェズ・バターワース、ジョン=ヘンリー・バターワース、ジェイソン・ケラー
- 出演者:マット・デイモン、クリスチャン・ベール
- 製作:ピーター・チャーニン、ジェンノ・トッピング、ジェームス・マンゴールド
- 撮影:フェドン・パパマイケル
- 配給:アメリカ / 20世紀フォックス、日本 / ウォルト・ディズニー・ジャパン
- 音楽:マルコ・ベルトラミ、バック・サンダース
- 製作国:アメリカ合衆国
- 製作費:9760万ドル(約106億円)※2020年1月28日現在のレートより
ジェームズ・マンゴールド監督は映画『17歳のカルテ』を監修したり、世界中でヒットした『グレイテスト・ショーマン』の製作に携わるなど今とても波に乗っている脚本家・映画監督です。
彼の手掛ける映画はどの作品もどこか”ロマン”を感じる作品となっており、最新作映画『フォードvsフェラーリ』も例外ではありません。世界中の車好きの心を揺さぶる仕上がりですよ!
そもそもフォードとフェラーリって?
話題となっている映画『フォードvsフェラーリ』ですが、そもそもどんな背景があるのでしょうか。ここではザックリと簡単にご紹介します。
一般的なファミリーカーを生産していたフォード
1960年代のフォードといえば、とにかく車を生産する工程を徹底して効率化することで生産する時間を短くし、安価な車を大量に世へ送り出ことが得意な会社でした。
当時は誰もがフォードの黒い車に乗り、街中の大通りは同じ車で真っ黒になるほどであったそう。”安い”そして”気軽に乗れる”という意味でも、現代でいう一般的な”ファミリーカー”のような感覚の車ですね。
ですので、「まったくもってレーシングカーなんて作ったこともない」ような会社だったんです。
映画『フォードvsフェラーリ』では、そんなフォード社が初めてのレーシングカーをとても苦労しながら生み出す姿が描かれています。
下の写真はフォード初となるレーシングカー、そして見事に「ル・マン(24時間レース)」にて勝利をおさめた「GT40 マークⅡ」です。
このレーシングカーは映画のなかにも出てきますが、ほんとに息を飲むほどにカッコいいですよね!
一般的なファミリーカーを作っている会社がこんなレースに適した素晴らしい車を作ってしまうなんて、当時製作に携わった人たちの血のにじむような研究と努力を感じることができます。
速さとカッコよさを追求していたフェラーリ
一方、1960年代のフェラーリはとにかく”カッコよさ”と”速さ”を追求していました。そしてこの2つを満たすためならば「いくらコストをつぎ込んでも良い!」という考えのもとで車を生産していたんですね。
下の写真は1960年代フェラーリのレーシングカーです。現代の感覚で見てもすごくカッコイイですよね!
この目をひく色、そしてしなやかなフォームと速さ、エンジン音…そのすべてが当時の車好きの気持ちを昂らせていたことでしょう。
当時のフェラーリ社は一般の人が乗る車を生産するよりも、レースで好成績を残しその資金を得ることで「さらにカッコよくて速い車」を作りだすことが目的となっているような会社でした。
ですのである種”レースに頼るビジネスモデル”の会社だったということです。
そういった意味でも、作中に出てくるフォード社とフェラーリ社は「車を作る目的」自体がまったく異なっていることがわかりますね。
映画を見るとき、このような前提のもと物語が進行していくことがわかっていれば、ストーリーを把握しやすくなると思います。
『フォードvsフェラーリ』あらすじ
1960年代、伝説的なレースとされていた24時間耐久レース。その名も「ル・マン」。
毎年フランスで開催されていたそのレースで優勝するということは、当時世界でいちばんのレーシングカーを作ることのできる会社であることを世に知らしめる、何よりもの”広告”になるのでした。
1965年のレースまでは、毎年のようにフェラーリが優勝していました。しかしそのレースに参加してみたかったフォードは、レースを制するためフェラーリの買収を企むんですね。
しかしフェラーリとの交渉は大失敗。しかも当時のフォード社の経営者フォード二世に対してフェラーリの経営者であるエンツォ・フェラーリはこの上ない言葉でフォード二世を見下します。
この酷い交渉決別を経たことでフォード二世の闘争心に火がつき、本格的に自前でレーシングカーを作ることに力を入れることとなりました。
そこでフォード社より声がかかったのが、過去にル・マンにて優勝した経験のあるキャロル・シェルビー。彼は優勝した後、心臓病にてレーサーは引退していました。
そしてそんなシェルビーに目をつけられたのが、破天荒な性格でありながら天才的なドライバーであるケン・マイルズ。彼の腕は確かですがとても接しづらく周囲から煙たがられる存在でした。
そんな2人はレース本番までの90日間という短い期間で、天下のフェラーリに勝てるようなレーシングカーを作ることを決意。しかしなかなか理想的な車が出来上がらずに苦悩するんですね。
時に2人は衝突し合いながらも「最高のレーシングカーを作る!」という共通の志から、天才的な能力を発揮します。
人間的な卑劣さや会社という組織のしがらみに苦しめられながらも、やっと完成させたフォード社のレーシングカー”GT40”!その熱い気持ちの結晶である車で、ル・マンへの出場を果たします。
最高のレーシングカーを製作する天才2人。そしてそんな男たちが、熱い志により人生をかけた大勝負に出るというロマンがつまった物語です。
映画『フォードvsフェラーリ』の見どころ
予告の段階で多くの人の気持ちをつかむことになった映画『フォードvsフェラーリ』。
筆者が実際に映画を視聴してみて「ここが見どころだ!」というポイントについて、いくつかご紹介したいと思います。
大きな困難に立ち向かう男たちの姿!
1960年代当時は、天下のフェラーリとしてル・マン(24時間レース)では毎回のようにフェラーリが優勝していました。
そんな強敵にどうすれば勝てるのか、どんなドライバーが必要なのか、そして何を信じ抜くことで自分たちにとっての最高のレーシングカーができあがるのか。
”会社”という、お金やその他複雑な事情の絡んだ組織に苦労するシーンも多く見られます。しかし「勝ちたい!」という熱い気持ちを貫き通す姿は素直にカッコよかったです!
そんな男たちが挑み続ける姿、そして友情を通していっしょに夢を叶えようとする姿には思わず胸が高鳴ります。
レーシングカーを想ってこその表現である”she(彼女)”
作中では車のことをしばしば「She(彼女)」や「Lady(女性)」と表現するシーンがあります。
スピードを追及するなかでも「彼女のことは優しく扱わなければ」や「彼女はもっと速く走りたがってる!」などのように、まるで大切な女性を扱うように表現されているところも注目ポイントです。
ただ速く走ればいいだけじゃない、ドライバーと車の絆も大切なんだということを感じることができますよ。
カーアクション、そして体の底に響くエンジン音
テレビやPC画面でなく、なぜわざわざ映画館で映画を見るかと言えば、やはり「音」や「臨場感」を味わいたいからという人も多いのでは。
『フォードvsフェラーリ』に関してはまさにレーシングカーの力強いエンジン音、そして走行しているときのスピード感や臨場感というのはかなり素晴らしいものでした。
レーシングカーがエンジンをふかせば体の芯に響き渡る振動音にザワッ!と鳥肌がたち、車が走っているときには思わずイスにしがみつき「おぉ~っ!!」と声をあげたくなる。それくらい素晴らしいです。
レースのときには「ずっと鼓動が鳴りやまない!」というほどに没入してしまいますよ!
男たちの”熱い”友情
この映画を語るうえで欠かすことのできない見どころは、何と言っても”男たちの友情”です!
作中では天才ドライバーでありながら破天荒な性格のケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)、そして天才カーデザイナーであるキャロル・シェルビー(マット・デイモン)が協力し難題に立ち向かいます。
同じ志をもった2人は車について深く話し合い、ときには拳で語り合う。そんないつも”本気”である男たちの姿につい胸が熱くなりますよ。
https://twitter.com/horohoro_no_mi/status/1222997001328971776
この映画は2019年11月公開後、早くもアカデミー賞の有力候補であるとささやかれています。その理由は、本気で戦いに挑み続ける2人の友情を描いた作品であるからとも言われているんです。
ワクワクする『フォードvsフェラーリ』予告動画がこれ!
『フォードvsフェラーリ』の舞台は1960年代のアメリカということで、たくさんのクラシックカーが登場します。
車好きな方にとっては、この映画のポスターや予告編を見て「ぜったいに見たい!」と思ってしまうそうです。その予告編が、こちら!
レーシングカーが駆け抜けるエンジン音、そしてフォード社があらゆる苦難を乗り越えながらも本気を出してレーシングカーを生み出す姿が予告からも伝わってきますね。
そしてキャロル・シェルビー(マット・デイモン)、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベール)という2人の個性的なキャラクターが描き出す人間ドラマにも期待がもてそうです。
『フォードvsフェラーリ』インタビュー撮影秘話など
作中では終始、素晴らしいクラシックカーや見ているだけで胸が躍るほどにカッコいい車がたくさん出てきます。そして大きな夢を抱き苦難に立ち向かう男たちについ胸が熱くなることも。
そんな映画『フォード社vsフェラーリ』ですが、実際の撮影はどのように行われ主演の二人はどのような気持ちで挑んだのでしょうか。
ここでは舞台裏についてのインタビューより撮影の裏側についてピックアップしてみたいと思います!
ケンカのシーンが難しくも楽しかった!
映画のなかの”見どころ”であると言われるシーン。それがシェルビーとケンが拳を交わしてケンカをするところです。
このシーンでは仲良しの男同士が気持ちをぶつけ合うのですが、TV番組のインタビューでは「お互い相手に痛い思いをさせたくなかったんだ」と話す2人。普段はとても仲良しなのを感じますよね!
まるで兄弟げんかのように子供っぽくケンカし、最後はどちらが勝つわけでもなく2人で疲れ果てる姿を演じるのが可笑しく、お互いにとっても楽しかったそうです。
何日も自分たちで準備し、撮影の時は場面を確認しては笑いながら行った撮影。マット・デイモンは「キャラクターとの関係性を深める重要なシーンだ」と話しています。
(※インタビュー動画 2分56秒あたりから、ケンカ撮影の内容を話しています。)
レースシーンの撮影は退屈だった!?
映画の作中ではレースでものすごいスピードを出し、白熱した空気のなかでライバルの車と競り合うシーンなどが多くあります。
しかしドライバーがセリフを発するシーンなどは別撮りで、ノロノロと走る、機械のたくさんついた車のなかであったそう。
そんなゆっくりと進む車のなかで、あたかも時速200kmを超えるスピードを出し熱く闘っているように見せるのに気持ちを集中したという話をしています。
上のような撮影機材に囲まれながらもあのような白熱したレースシーンを演じることのできるクリスチャン・ベールの実力にはひたすら驚かされますね!
(※インタビュー動画 5分58秒あたりからレースのシーンについて話しています。)
車の知識やレースの重要さを知らない人でも楽しめる!
ところでフォード社のことやフェラーリ社の背景、車についての知識、そしてレーシングカーを作っている会社にとってのレースの重要性などを理解していない人が見ても面白いのでしょうか。
それに対しクリスチャン・ベールは「映画全体を通しての興奮する気持ち、そして人間ドラマにおける感動というのはどんな人にも通じるものがあると思う。」と話しています。
筆者自身「カッコいい車が好き!」という気持ちだけで視聴した一人ですが、その気持ち以上に”友情”やそれぞれの性格や考えをもつ人同士の”人間ドラマ”にはとても胸が熱くなりました。
(※インタビュー動画16分45秒あたりからインタビュワーの質問に答えています。)
あの有名人も!?『フォードvsフェラーリ』を見た人の感想
予告やポスターを見るだけでも「すごく見たい!」という声が上がるほどに注目されている映画『フォードvsフェラーリ』。
実際に映画を見た人はどんな感想をもっているのでしょうか。いくつかピックアップしてみます。
ツイッターを見ている中でも特に目立つのが、クレイジーケンバンドさん。映画のキャストやレーシングカーの素晴らしさについて熱く感想を語っていますね。
https://twitter.com/crazykenband20/status/1220568115525767168
そしてやはりこの映画の見どころである人間ドラマ、そしてレーシングカーのエンジン音にも感動をする方がとても多いです。
この”音”の迫力や臨場感というのは、ぜひ映画館で味わってほしいところ。感動すること間違いなしですよ!
そしてこの方も言っているように作中ではフォード社内での意見相違による闘い、そして組織ならではの難しいしがらみも描かれています。
そういった意味でも”人間ドラマ”と呼ぶのにふさわしい映画であると感じることができますよ。
クリスチャン・ベールの役作りがすごすぎると話題に!
本作のなかで破天荒なドライバーを演じるクリスチャン・ベール。他の映画作品でも言われることですが、彼の役作りに対する執念というのは異常であるとも言われているんです。
じつは彼、『フォードvsフェラーリ』の1本前(2017年~2018年頃)に撮影した『Vice(バイス)』という映画では、体重100kgを超える肥満体の役を演じているんです。
しかし、それを『フォードvsフェラーリ』の撮影のため30kg分減量しほんの数カ月で身長182cmで約70kgという、”ほっそり”した体系に生まれ変わった姿で撮影現場に訪れたそう。
下の写真が『Vice(バイス)』を撮影したときのベールです。今の細い体形からするとまったく別人に見えますよね!
それくらい役作りに力を入れるベールは、マット・デイモンの「一体どうやってそんなにやせたの!?」という質問に、「ただ食べなかっただけだよ。」と軽く答えたそうです。
そしてインタビューでの役作りに対する質問に対しては「旅行というのは目的地へ到着することよりも”旅の過程”を楽しむものさ。」と、またしても当然のように答えています。
そうは言っても数カ月で約30kg落としたり、他の作品ではやつれた顔を作るため数カ月間1日にツナ缶1つで済ませていたり、逆に激太りするため暴飲暴食をしたりと、とにかく執念がすごいんです!
ここまでの役作りをできる彼であればどんな役も務まりそうですが、才能あふれる彼であるからこそどうか体調や病気にだけは気をつけてほしいものですね。
(引用:https://www.thestar.com/entertainment/movies/2019/11/16/matt-damon-and-christian-bale-talk-about-cars-competing-and-the-feminine-idea-at-the-heart-of-ford-v-ferrari.html)
『フォードvsフェラーリ』は人間ドラマに注目
2019年9月にはトロント国際映画祭で、映画『フォードvsフェラーリ』のワールドプレミア、そして記者会見が開かれました。
この映画祭はアカデミー賞受賞に最も近い映画作品の出演者が多く参加するイベントです。世界中から記者が集まり、『フォードvsフェラーリ』も有力候補ということでかなり注目されていました。
この記者会見のなかでクリスチャン・ベールは作品について「ケンカをしてもお互いに認め合っている主人公2人の友情、そして個性的で情熱的な人間性に魅力を感じる」と話しています。
一方、本作の監督を務めたジェームズ・マンゴールドは作品について「”友情”が大きなテーマのひとつだ。車だけでなく、人間ドラマに注目してほしい」と話しました。
アカデミー賞を受賞する映画はどれも”人間ドラマ”を描いた作品が受賞しやすい傾向にあります。そういった意味でも本作が受賞の有力候補とされていることにうなずけますね。
2020年のアカデミー賞授賞式は2月9日(アメリカ現地時間)。良い結果に期待ですね!
まとめ
映画『フォードvsフェラーリ』について作品の見どころや撮影秘話にいたるまでご紹介してきました。
車の知識、そして時代背景を知らずとも十分に楽しむことのできるこの作品。とにかく純粋な気持ちで「カッコイイ!」とか「そこだ!行け!」とか思いながら見てほしいですね。
思わず興奮し立ち上がって歓喜したくなったり、こらえきれない笑いがこみあげてくるほどにおもしろいシーンもありました。
見るかどうか迷っている方には強くオススメしたい作品です。すこしでも気になっている方、ぜひ劇場へ足を運んでみてください。きっとあなたの興奮がよみがえりますよ!