日本映画(ドラマ)

恋は愛に変わるのか?『百円の恋』の行方を徹底解説!

映画『百円の恋』は、仕事や恋って、どうしてうまくいかないんだろう?もがいてる自分がかっこ悪く見える…そんな気分になるときにおすすめの映画です。

この作品では、街ですれ違った人の人生の一瞬を、覗き見たような感情にとらわれます。かつて人生も恋も棄てた主人公が、不器用ながら愛を求め、必死にもがいています。

今日は主人公たちのようにダボダボスウェットを着て思いっきりだらけながら、この映画の世界観に浸ってみましょう!きっとその思いが救われるような感情になれますよ。

たくさんの見どころを解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。

(出典画像:映画『百円の恋』公式サイト http://100yen-koi.jp/)

映画『百円の恋』作品情報

  • 公開:2014年12月20日
  • 監督:武正春
  • 脚本:足立紳
  • 主題歌:クリープパイプ「百八円の恋」
  • 製作: 間宮登良松
  • 配給:SPOTTED PRODUCTIONS
  • 音楽:海田庄吾
  • 制作国:日本
  • 上映時間:113分

『百円の恋』は、151本の応募作品の中から、第一回松田優作賞(故・松田優作氏の志を受け継ぐクリエイターを発掘すべく、2012 年に新設された脚本賞)を受賞した脚本を映画化した作品です。

女と男の挫折と再生、というありがちなテーマでありながら、人間の弱さと強さをまっすぐに描ききっています。とてもリアルで惹きつけられる作品です。

『百円の恋』作品概要

主人公の一子(演:安藤サクラ)は32歳、恋人なし、仕事なし、お金もなしというイタイ女性。

昼夜逆転の生活を送りつつタバコをふかし、ゲームに明け暮れる一子。働き始めた百円ショップは、なれなれしくていやらしい同僚、廃棄弁当をあさりに来るオバサンと「イタイ」人の巣窟でした。

プロボクサーである狩野のトレーニングを見るのが一子の楽しみでしたが、狩野は引退試案で完敗。更に自堕落になった狩野と一子は同棲生活を送ります。しかし狩野は突然、一子の前から消えてしまいました。

一子はボクシングを始めることで、狩野への感情やこれまでの人生のモヤモヤを晴らすようにトレーニングに打ち込みます…。

『百円の恋』見どころはこの2つ!

恋愛映画でありながら、後半部分のボクシングシーンも見どころの映画です。それぞれをご紹介します。

恋愛映画としての『百円の恋』

恋を棄てていた一子の前にあらわれた、狩野。狩野のスパーリングをただ見つめることしかできない一子。時に強引で、かと思えばそっけなくする狩野の態度。不器用な2人の恋は痛みを感じるほどです。

一子は言葉には出さないものの、狩野に精一杯の愛情表現をします。風邪を引いた狩野の看病をしたり、なけなしのお金をはたいてご馳走を振舞ったり。しかし狩野はそんな一子の好意を素直に受け取ることができません。

お互いの想いはいつも一方通行で「どうしてうまくいかないんだろう?」と観る者の心を痛く刺してきます。そんなヤキモキを恋愛映画『百円の恋』してぜひ注目して観てください。

ボクシング映画としての『百円の恋』

後半部分は、狩野の通っていたボクシングジムに一子が入会し、試合に出るまでを描いています。

物語が進むにつれ、一子のゆるみきった脂肪は筋肉に、ダラダラと歩いた道はジョギングコースに変わります。ボクシングのために禁煙し、父親と久しぶりの食事も玉ねぎだけををつまむというストイックさ。

一子は自己主張をしませんが、唯一「プロになって試合に出たい」と何度もオーナーに直談判します。周りの目を気にせず鏡の前の自分自身だけを見て、愚直にトレーニングにのめりこむのです。

その姿は、心に抱えている劣等感を打ち消し、夢を成し遂げようとすることのカッコよさを、私たちに訴えかけます

時価百円の女、斎藤一子(演:安藤サクラ)

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斎藤一子(演:安藤サクラ)の見どころ

一子は自堕落な人間です。家業の弁当屋の手伝いをせず、ゲームばかりしています。一人暮らしすると啖呵を切っても部屋を借りるお金を母親から無心する始末。口臭を指摘されても「恋はしないから」とバッサリ。

一方で、風邪をひいた狩野にリンゴのすりおろしを作り、狩野と話すときに口臭を気にして口元を隠すなど乙女な一面も。

ボクシングを始めれば32歳の年齢制限があるにも関わらずプロ試験に挑戦し、試合にまでこぎつけます。不器用だけど優しくて、やると決めたら一生懸命。そんな彼女の魅力を物語の進行とともに味わってください。

安藤サクラさんの経歴

安藤サクラさんは1986年生まれ。俳優の柄本佑さんと2012年にご結婚されたことも有名ですね。安藤さんは父親が奥田英二さん、母親が安藤加津さん、姉の桃子さんは映画監督という芸能一家です。

デビュー作品は『風の外側』クランクイン直前に降板した主演女優の代役として出演されました。その後数多くの映画、テレビドラマにひっぱりだこ。

安藤サクラさんは2017年『DESTINY 鎌倉ものがたり』で死神役と、2018年には『万引き家族』で主人公の妻信代役で出演されています。

頑張るなんてカッコ悪い、狩野祐二(演:新井浩文)

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狩野祐二(演:新井浩文)の見どころ

狩野はいわゆるダメンズです。ボクシングを辞めた後は、どんな仕事も長続きません。一子に対してもデートに誘ったかと思えば、冷徹な態度を取ります。

「やる気を出せばでるけど、頑張るってカッコ悪い」と平然と言ってのけるイタイこじらせアラフォーです。一子と野間の関係を疑ってはつっかかり、一子が近づこうとすると逃げる。彼は傷つきやすいのかもしれません。

関わらない方がいい、と思いながらどこか守りたくなる。目が離せない子どものように生きる、彼の魅力をぜひ感じてください。

新井浩文さんの経歴

新井浩文さんは1979年生まれ。小学4年生から始めた卓球はかなりの腕前で、高校時代には全国大会に出場されました。

彼のデビュー作品は『GO』で主人公の親友役です。新井浩文さんも数多くの映画、テレビドラマで多彩な役を演じました。

近年では2019年に『台風家族』で主人公の弟として出演、同年『善悪の屑』で主役を演じました。しかし2019年2月に強制性交の疑いで逮捕。所属事務所から解雇され事実上の引退をされています。

『百円の恋』をいろどる個性的な共演者

『百円の恋』には、他にも強烈なクセの持ち主たちが登場します。ここでは2人ご紹介します。

野間明(演:坂田聡)

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坂田聡さんが演じる野間明は、百円ショップの同僚です。自分より強い人にはへらへら、弱い人には偉そうな態度を取る野間。一子に肉体関係を迫る際には、彼女の腹を殴りホテルに連れ込む最低っぷりをみせます。

この作品の中で一番救いようのないダメさを持っていて、厄介なことに身近に存在しそうなヤバい雰囲気を出しています。

池内敏子(演:根岸季衣)

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根岸季衣さんが演じる池内敏子は、百円ショップの元従業員です。従業員だったころにレジのお金を盗んでクビになりました。現在は、店の廃棄弁当をあさることを日課にしています。

彼女の最後の行動は、犯罪ながらどこか可愛げがあり憎めません。

『百円の恋』主題歌に込められたメッセージとは?

『百円の恋』のラストを締めくくるのは、クリープパイプの「百八円の恋」。この楽曲は、映画のシナリオを読み込んで描き下ろしたものです。

歌詞に何度もでてくる「いたい」は「痛い」と「居たい」の意味があります。試合で殴られて顔がパンパンに腫れて「痛い」と、狩野のそばに「居たい」気持ちが伝わってきますね。

「居たい」という歌詞に関しては曲名の一部にある「百八円」がキーワードです。

誰かを好きになるってことにも消費税がかかっていて

百円の恋に八円の愛 ってわかってるけど

(引用:百八円の恋 作詞者:尾崎世界観)

一方的な恋(百円)に対して、お互いに想いあう愛(八円)。これはどういう意味でしょうか?

好きな人と一緒にいるためには恋(百円)だけではだめで、愛(八円)がないと成り立たない。不器用な一子は恋心を愛に変えられるか?主題歌「百八円の恋」は、一子と狩野の恋愛をお金に例えて問いかけています。

色んな解釈ができる深い歌詞。映画とともに主題歌もじっくりと味わってみてくださいね。

『百円の恋』心に残るセリフ3選

この映画は大げさなケンカや言葉をかけあうシーンは多くありません。それだけに登場人物がぼそっと言った一言が、心に突き刺さります。その中の3つをご紹介します。

「女房気取りかよ」同棲を始めて数日、一子が休日に夕食を作る、と言った後の狩野の一言。これは本気で傷つく…。彼女じゃないのわたし?とも言えず狩野の背中を見つめる一子がいじらしいです。

「殴りあったり、肩たたきあったり、なんかそういうのが…」狩野にボクシングをする理由を聞かれて一子が絞り出した一言。一子は狩野の試合後に、選手のハグで感動しました。彼女は純粋なのです。

「勝ちたかった…一度でいいから…」試合後、一子は初めて感情をあらわにします。「まぁ…最高だからな、勝利の味は」と狩野は慰めもせず、さらに一子を泣かせます。それが狩野の本音で愛情表現なのです。

『百円の恋』多くの賞を受けた名作

『百円の恋』は、第一回松田優作賞を受賞した素晴らしい脚本であることに加えて、演じきった役者さんも多くの賞を受賞しました。

第27回東京国際映画祭

(国際映画製作者連盟 公認の国際映画祭盟 公認の国際映画祭)日本映画スプラッシュ部門作品賞受賞

第39回日本アカデミー賞

  • 最優秀主演女優賞(安藤サクラ)
  • 最優秀脚本賞(足立紳)
  • 優秀作品賞
  • 優秀監督賞(武正晴)
  • 優秀助演男優賞(新井浩文)

主演の安藤サクラさんは以下も受賞しています。

  • 第88回キネマ旬報ベスト・テン(2014年)主演女優賞
  • 第57回ブルーリボン賞
  • 第29回高輪映画祭主演女優賞

『百円の恋』視聴方法はこちら!

いますぐにでも『百円の恋』を観たいという方!2020年1月現在、以下ののVOD(ビデオオンデマンド)で視聴ができます。

今回の記事はネタバレな部分もありますが、出演者のキャラクターの個性を知った上でご覧になれると思います。ですので、より楽しんでいただけると思いますよ!

113分のさまざまな「いたい」世界観をご家庭で楽しんでみてはいかがでしょうか?

『百円の恋』:まとめ

http://100yen-koi.jp/

『百円の恋』の登場人物は、ダメダメでリアルで私たちの心にズシンときます。努力をしても結果は報われないことがある、まさに人生そのものを表現しています。

しかし主題歌の歌詞にもあるように「終わったのは始まったから 負けたのは戦ってたから 別れたのは出会えたから」と人生は痛いのです。

毎日が上手くいかなくて「痛い」毎日を送っているあなた、毎日にやる気が出なくて「イタイ」と感じるあなた。

映画『百円の恋』を観ることでそれでもいいんだと、どこかホッとしたり、逆にやる気を起こさせてくれると思います。ぜひ、ご覧ください。

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風早美槻(かざはやみつき)
■経歴 接客販売業20年、現在登録販売者として従事 ■モットー 幸せは自分の心が決める ■好きなこと メイク、マッサージ、整体、占い、音声配信、旅行 ■近況 最近、観葉植物を育て始めました。