本記事は、推理小説家・宮部みゆき氏原作の『ソロモンの偽証 前篇・事件』を未視聴のあなたへ、ネタバレなしであらすじや見どころをお伝えする内容となっています!
面白いミステリー映画を探している方にも、宮部みゆき作品を愛する方にもお勧めの作品です。
せっかく観るなら全体像を把握してから観たいなど、この映画を気になっている方こそ、ぜひ最後まで読んでみて下さいね。
『ソロモンの偽証 前篇・事件』の基本情報
それではまず、この映画の基本情報についてさらっと触れていきます。
- 公開:2015年
- 上映時間:121分
- 監督:成島出
- 原作:宮部みゆき
- 脚本:真辺克彦
本作品は、”前篇”とある通り、二篇完結作品になっています。前篇では中学生が校内裁判を行うことになった事件と校内外で起きている人間関係の真相、後篇では裁判の様子と全体の結末についてが描かれています。
原作とは少し異なる構成となっているので、映画単体として観るとスッと世界に入っていけます。いずれも素晴らしい作品なので、両方をそれぞれ違った角度から楽しんでいただけるでしょう。
嘘つきは大人のはじまり?作者・宮部みゆきも手こずった超大作!
本作品の原作は、宮部みゆきさんの長編推理小説となっています。なんとご本人が特設サイト上にて、「この10年、私はずっとこの作品の中に「留年」していました。」とコメントするほどの年月をかけた作品です。
(参考:https://www.shinchosha.co.jp/solomon/interview.html)
構想に15年、執筆に9年もかかっているのですから、それはもう推理小説ファンや宮部みゆきファンにとってはたまらない作品でしょう。
さらにそんな大作を実写映画化するのですから、「本作の映画化は最初は難しいと思っていた」と監督を務めた成島氏ご自身が語っています。
(参考:https://www.creativevillage.ne.jp/910)
『火車』や『模倣犯』など推理小説界で圧倒的人気を誇る宮部みゆきさんと、『孤高のメス』や『八日目の蝉』などを世に生み出し、高い評価を得る成島出監督の化学反応をぜひ味わってほしいものです。
ちょっと覗き見!予告編『ソロモンの偽証 前篇・事件』
イメージをつかむためにも予告編は、ぜひご覧いただきたいところ。学校で裁判が行われるという異例のストーリーになっていますが、そうなってしまった経緯が前篇に描かれています。
メインキャラクターとなる中学生役の俳優たちは、放映から5年たった現在、様々な場面で活躍しています。
また、脇をかためる先生や保護者たちは様々な作品で見覚えのある、大変豪華な顔ぶれになっています。
『ソロモンの偽証 前篇・事件』出演キャスト
基本的に中学生たちが中心のストーリーとなるため、メインキャラクターとなる中学生役の6人をご紹介します。
藤野涼子さん/藤野涼子 役
なんと本作がデビュー作で、1万人の応募者から選ばれたシンデレラガール!本作だけで6つの新人賞を受賞しています。
その他、映画『クリーピー 偽りの隣人』や、連続テレビ小説『ひよっこ』などにも出演。
板垣瑞生さん/神原和彦 役
本作では新人男優賞(南俊子賞)を受賞。『闇金ウシジマくんPart2』『アオハライド』にも出演。
映画だけにとどまらず、ボーカルダンスユニット、ドラマ、バラエティ、ミュージックビデオ等幅広く活躍しています。
望月歩さん/柏木卓也 役
ドラマ『マザー・ゲーム』『コウノドリ』『3年A組‐今から、皆さんは人質です‐』等幅広く出演。
2016年には映画、舞台ともに『真田十勇士』にて真田大助(真田幸昌)役を好演しました。
石井杏奈さん/三宅樹里 役
本作にてブルーリボン賞新人賞受賞したE-girls最年少メンバーです。パフォーマーであると同時に、キッズモデルやドラマ出演など幼少期より幅広く活躍。
『私立バカレア高校』『仰げば尊し』『チア☆ダン』等に出演しています。
富田望生さん/浅井松子 役
本作のため15キロ太る女優魂を持っています。『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』『3年A組‐今から、皆さんは人質です‐』等出演作多数。
その他にも『ヒルナンデス!』の木曜レギュラーなど、ドラマやバラエティーで幅広く活躍中です。
清水尋也さん/大出俊次 役
映画『陽だまりの彼女』『渇き。』『ちはやふる』、ドラマ『高校入試』『イノセンス 冤罪弁護士』など話題作に多く出演。
本作では不良役を演じましたが『渇き。』では対極の、いじめにあう”ボク”役を熱演しました。
- 藤野涼子(大人)役 尾野真千子さん
- 藤野剛(涼子の父)役 佐々木蔵之介さん
- 藤野邦子(涼子の母)役 夏川結衣さん
- 三宅未来(三宅樹里の母)役 永作博美さん
- 森内先生(涼子のクラス担任)役 黒木華さん
- 北尾先生(学校内裁判唯一の味方となった教諭)役 松重豊さん
- 津崎校長(校長先生)役 小日向文世さん
『ソロモンの偽証 前篇・事件』あらすじ
本作は、当時クラス委員を務めていた藤野涼子が教師として出身中学校に戻ってきて、伝説として伝えられる1990年12月25日の事件を回想し、話しだすところから物語が始まります。
舞台となる城東第三中学校の校庭で2年A組の男子生徒が遺体となって発見され、藤野涼子は遺体の第一発見者でした。ずっと良い娘、良い生徒だった涼子は自殺と断定した警察に反感を抱きます。
ひとりの不良生徒を殺人者とする告発状が届き、未解決のまま生徒たちは不安の中で3年生に進級しより違和感が増した涼子や元クラスメイトたち。その告発状は誰が出したものなのか、死んだ生徒は本当に自殺なのか。
耐えられなくなった涼子は亡くなった生徒の小学校時代の友人という他校生・神原らの協力を得て、自分たちの手で真実をつかもうと、学校内裁判の開廷準備を始めるところで前篇は幕を閉じます。
前篇の見どころをネタバレなしで解説!
本章では、作品の中で特に注目していただきたい見どころを3点ネタバレにならないよう解説します。
見どころ①誰もが何かしらの問題を抱えている
中学生という多感で悩みも多い時期。その中でもそれぞれの家庭環境が描かれることにより、各キャラクターの人格形成の裏側を見ることが出来ます。
例えばいじめる側の子どもは、その背景や環境も含めてリアルに描かれているため、「いじめっ子は一概に悪者と言い切れるのか?」ということを考えさせられます。
見どころ②亡くなった生徒のまっすぐな瞳と言葉
亡くなった生徒は後に紹介する非常に強い言葉を発し、それを言われた生徒は彼の死後も彼に翻弄される様子が描かれています。彼が大勢の人を追い詰めるのは、まっすぐな瞳で人間の弱い部分を突くからだと推測します。
彼については視聴後の意見として賛否分かれていますが、死をもって訴えたいことがあったのではないかと感じてしまいます。
見どころ③強い正義感と静かに流れる涙
家でも学校でもずっと優等生だった涼子は、劇中で何度も静かな涙を流します。大声を出したりわめいたりと感情的に泣くのではなく、音もなく静かに涙だけが落ちていく様子は観ているこちらの心をより締め付けます。
真実を明らかにする、いわゆる”正義のミカタ”のような存在として描かれる涼子が涙するシーン、あなた自身の目で確認してほしい見どころです。
ソロモンの偽証というタイトルに込められた意味とは?
『ソロモンの偽証』という強いインパクトのあるタイトル。中学生の校内裁判に関係あるの?と思いませんか。本章では新潮社による作者インタビューから見えてきた、タイトルに込められた意味について解説します。
校内裁判という設定について
ひとりの生徒の死による校内裁判とはフィクションのように感じますが、実は本作品の設定と同年の1990年に神戸の高校で生徒が亡くなり、その事件をどう受け止めるかというテーマで模擬裁判が行われたといいます。
事実は小説よりも奇なりということわざもある通り、この設定において原作者自身、様々な中学校や高校へ取材にいっています。
ちょうどこの作品の最後の仕上げをしているときに、滋賀県の大津の中学校で生徒さんが自殺して、最終的に警察が捜査に踏み切ることになった。
でも、大津の中学校の、特に同級生たちは、大人たちよりはるかにしっかりしていましたね。亡くなった同級生のために至らなかったところを悔やんだり、事実をはっきりさせてほしいと願う言葉が、アンケートや取材で出てきていました。
この作品でも、裁判に関わる中学生たちって先生よりよほどしっかりしているんですが、大津の学校の事件で勇気を持って発言した生徒さんたちのおかげで、私の書いたフィクションが一〇〇パーセントの作り物にはならなかった。頭が下がるような気持ちでした。
(引用:https://www.shinchosha.co.jp/solomon/interview.html)
ソロモン王と偽証の組み合わせについて
ソロモン王という人物はそもそも信託を受けて人を裁くことを許された人物として旧約聖書に登場します。つまり”知恵の象徴”。一方で偽証とは、偽りの証言、すなわち”嘘”です。
敢えて説明してしまうなら、そうですね、最も知恵あるものが嘘をついている。最も権力を持つものが嘘をついている。この場合は学校組織とか、社会がと言ってもいいかもしれません。
あるいは、最も正しいことをしようとするものが嘘をついている、ということでしょう。
(引用:https://www.shinchosha.co.jp/solomon/interview.html)
この衝撃的なインタビュー記事を見て、現実として起こりうることであるという驚きと、それをここまで印象に残るタイトルとして表現した宮部みゆきさんに、改めて感服しました。
心にグサッ!インパクト大なあの台詞
本章では劇中で亡くなった生徒、柏木卓也が、クラス委員の涼子に向けた核心を突く台詞を紹介します。
教室ではいじめはダメとか言っておきながら、見て見ぬ振りする偽善者。お前みたいな偽善者が一番悪質なんだよ
(引用:映画『ソロモンの偽証 前篇・事件』柏木卓也台詞より)
残酷なほどまっすぐなその瞳と同時に、彼は何を思い何故この言葉を口にしたのでしょうか。何か彼からのメッセージがあるように感じてしまいませんか。その答えを考えながら視聴してみてほしいのです。
ネット上では、この台詞を吐いた少年を批判する声もあがっています。しかし中学生という時期ならなおさら、自己の正義感で無自覚に相手を傷つけてしまうことは起きやすいのではないでしょうか。
ましてこの少年自身がいじめを受けたことのある身です。本当は助けたいけれど自分ではできないからこそ、強い立場にいそうな人に、言葉のナイフを向けてしまったのかもしれません。
あなたならどう考察しますか?ぜひこの台詞を頭の片隅に入れ、映画を観ながら考えてみて下さい。
『ソロモンの偽証 前篇・事件』見るなら
以上で、『ソロモンの偽証 前篇・事件』のあらすじのまとめになります。少しでも気になった方は、下記サイトからご視聴いただけます。
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『ソロモンの偽証 前篇・事件』あらすじ解説まとめ
今回は『ソロモンの偽証 前篇・事件』のあらすじを解説することで、まだ視聴していないあなたが本作品に興味を持つこと、また視聴するにあたってわかりやすくなることを期待し執筆しました。
原作と映画、どちらも素晴らしい作品なので、それぞれの世界で様々な考察をしてみるというのも面白いかもしれませんね。
ミステリーのジャンルでありながらも身近な題材なので、ぜひ楽しんでみて下さい。