「「世界一キライなあなたに」か。確か、障害を負ってしまった人とのラブストーリーなんだよね。面白いのかな・・・。」
「世界一キライなあなたに」は、ラブストーリーに尊厳死というテーマを織り交ぜた作品です。
この記事では、「世界一キライなあなたに」を一部ネタバレありで紹介していきます。最愛の人が死を望んだら、あなたならどう決断しますか?
この記事は一部ネタバレありですが、作品の結末は伏せているのでご安心下さい。
アイキャッチ画像出典:https://warnerbros.co.jp/c/movies/sekakira/
「世界一キライなあなたに」のあらすじ
舞台はイギリスの田舎町。ルイーザ・クラークは、お洒落をすることが大好きな26歳。ある日、働いていたカフェが閉店することになり、突然職を失ってしまったルーが新たに得た職は、バイクの事故の影響で車椅子生活を余儀なくされ生きる希望を失ってしまった、ウィル・トレイナーの介護兼話し相手をする、期間6か月の仕事だった。最初はルーに冷たく当たるウィルだったがルーの明るさが、ウィルの頑な心を溶かしていき、やがて2人は心を通わせ、互いが最愛の存在になっていく。しかしある日ルーは知ってしまう。ウィルが決めた「生きる時間」があとわずかだということを・・・
出典:amazonco.jp prime-世界一キライなあなたに(吹き替え版)より
まだ若く可能性に満ちているルーと、可能性に満ちていた人生を満喫していたウィルの2人が織りなす、人の選択と死を考えさせられるラブストーリーです。
事故によって、何もかも奪われてしまったウィルと、ウィルを思うルーの愛情から、自分ならどうするかを「世界一キライなあなたに」はあなたに問いかけます。
愛するひとが、半年後に永遠の旅立ちを選ぼうとしていたら――
出典:https://warnerbros.co.jp/c/movies/sekakira/
「世界一キライなあなたに」の登場人物
ここで、「世界一キライなあなたに」の登場人物を3人紹介していきます。
ウィル・トレイナー(演:サム・クラフリン)
ウィルは、ちょっと嫌味っぽいところがあり、自分で決めた意志は最後まで貫き通す性格です。
かつてビジネスマンとして実力のあるエリート社員で、ある日、携帯電話で話ながら歩いている所をバイクにひかれてしまい、首から下が動かない身体になってしまいました。
それから2年間心を閉ざしてしまい、毎朝目覚めると首から下が動かないという苦悩の日々を過ごすことになります。
半年の期限付きでルーを雇うことになり、当初は彼女に酷く当っていましたが、ゆっくりと心を開くようになります。
- 「ロスト・フューチャー」(2010年、デビュー作。カレブ役)
- 「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」(2011年、フィリップ役)
- 「スノーホワイト、スノーホワイト/氷の王国」(2012年、2016年、ウィリアム王子役)
- 「あと1センチの恋」(2014年、アレックス役)
- 「ハンガーゲーム2、ハンガーゲームFINAL:レジスタンス、レボリューション」(2013年、2014年、フィニック役)
ルイーザ(ルー)・クラーク(演:エミリア・クラーク)
本名はルイーザですが、家族や他の人からはルーの愛称で呼ばれている、明るく活発な26歳の女性です。ファッションが大好きで、かつてはファッションについて学ぶために大学の進学を志していました。
働いていたカフェが閉店することになり、貧しい家族の生活費を稼ぐために、ウィルの介護の仕事を半年の期限付きで行うことになります。
嫌味ばかりのウィルが嫌になる日々ですが、ルーがウィルに嫌だという本音をぶちまけたことから、次第に2人の心の距離が近くなってきます。
次第にルーは、ウィルのことを深く知るようになり、ウィルが自分の命を絶つために半年後に死を選ぶことを知るのでした。
- 「タイム・パニック」(2010年、デビュー作、サバンナ役)
- 「ドム・ヘミングウェイ」(2013年、エヴリン役)
- 「ターミネーター:新起動/ジェネシス」(2015年、サラ・コナー役)
- 「ボイス・フロム・ザ・ダークネス」(2017年、ヴェレーナ役)
- 「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」(2018年、キーラ役)
- 「ゲーム・オブ・スローンズ」(2011年~2019年、デナーリス役)
パトリック(演:マシュー・ルイス)
パトリックは、ルーと6年間付き合っている彼氏です。トライアスロンが趣味で、トライアスロンをするために旅行へ行くほどです。
ルーがウィルのことで悩んでいる時に、いつでも悩み事を聞いてあげている優しさを持っています。ルーがウィルを介護する仕事が上手く行くようになると、彼にも心境の変化が訪れます。
- 「Some kind of Life」(1995年、デビュー作)
- 「ハリーポッターシリーズ」(2001年~2011年、ネビル役)
- 「アニー・イン・ザ・ターミナル」(2018年)
「世界一キライなあなたに」の公開当時、「ハリー・ポッター」のハリーの同級生ネビルが、スリムマッチョになっていると、話題を集めていました。
- カミーラ・トレイナー(ウィルの母親。演:ジャネット・マクティア)
- スティーブン・トレイナー(ウィルの父親。演:チャールズ・ダンス)
- ネイサン(ウィルを診ている男性看護師。演:スティーブン・ピーコック)
- アリシア(ウィルが付き合っていた恋人。演:ヴァネッサ・カービー)
- カトリーナ(トリーナ)・クラーク (ルーの妹。演:ジェナ・コールマン)
- バーナード・クラーク (ルーの父親。演:ブレダン・コイル)
- ジョージー・クラーク(ルーの母親。演:サマンサ・スパイロ)
「世界一キライなあなたに」の原作
「世界一キライなあなたに」には、原作小説があります。著者はジョジョ・モイーズで、タイトルは「ミー・ビフォア・ユー:きみと選んだ明日」(2015年)です。
原作はイギリスをはじめとした各国で話題を呼び、世界で850万部を超えるベストセラーとなった恋愛小説です。
映画の「世界一キライなあなたに」は、原作者のジョジョ・モイーズ自らが脚本に携わり、制作を行いました。
映画は原作を見た人でも楽しめる内容となっており、「映画のルーとウィルのイメージがぴったりだった。」という評価がありました。
映画から原作に入る人は、原作には映画で描ききれなかった細かい部分が描かれているので、より楽しめますよ。
「世界一キライなあなたに」の注目ポイント
「世界一キライなあなたに」の注目ポイントは、シーンごとに衣装が変っていくルーのファッションと、ただのラブストーリーではなく尊厳死を扱ったこと、の2点です。それぞれ解説していきます。
ルーのファッション
ルーは元々ファッションを学ぶため、大学の進学を目指していた過去を持っているので、ファッションに対するこだわりがあります。
ウィルの介護の仕事の面接を受ける時は、モノトーンのスーツ、パトリックとランニングをする時はスポーティな格好、ウィルの友人の結婚式に行った時には赤いナイトドレスを着こなします。
映画で使われた衣装はジル・テイラーが手がけ、個性と自分らしさを大切にするルーを表現するために作ったとのことです。
尊厳死というテーマ
「世界一キライなあなたに」は、ただのラブストーリーではなく、尊厳死を扱った重いテーマです。
ルーはウィルに人生は楽しいものだと味わって欲しい一方、ウィルは首から下が動かなくなる前の日々をどうしても忘れられず、自死を望みます。
ルーとウィルがお互い愛する気持ちを大切にして生きるのか、ウィルの意志を尊重して尊厳死を選択するのか、映画を観ているうちにどちらが正しいのか分からなくなっていきます。
公開当時、尊厳死というテーマは、多くの障害者活動家や映画評論家から非難の声が挙がったほどです。
「世界一キライなあなたに」の原題
「世界一キライなあなたに」の原題は、「me for you」というタイトルです。直訳すると、「あなたの前の私」という意味です。
もっと分かりやすくすると、「あなたに出会う前の私」という意味になります。「あなた(ウィル)」、「私(ルー)」と置き換えることもできますし、その逆でも意味は成り立ちますね。
作中では、ウィルを通してルーが変っていく、またはルーを通してウィルが変っていく描写が多くみられるので、ウィルとルーが出会う前と後の成長を、原題は現しているのではないかと推測できます。
原題が現している意味はこの限りではなく、他にも色々な意味が込められているので、映画を観ながらあれこれ推測するのも面白いですよ。
「世界一キライなあなたに」の曲
「世界一キライなあなたに」に使われている曲で特に人気なのが、エド・シーランが歌う「Thinking Out Loud」と「Photograph」です。それぞれ紹介していきます。
「Thinking Out Loud」
「Thinking Out Loud」は、ウィルの元カノのアリシアの結婚式のシーンで流れる挿入歌です。特に印象に残る歌詞は以下の2つがあります。
「70歳になっていても君を愛している。僕の心は23歳の時と変らずに恋をしているから」
出典:http://www.yogakuhack.com/entry/thinkingoutloud_edsheeran
「髪の毛がなくなって記憶がぼんやりして、人々が僕の名前を忘れて、今みたいにギターを弾けなくなっても君は僕を愛してくれている。」
出典:http://www.yogakuhack.com/entry/thinkingoutloud_edsheeran
この2つの歌詞から、永遠の愛をお互いに信じるかのような曲になっています。まるで、ウィルとルーの愛が永遠であるかのように願っているかのようですね。
「Photograph」
「Photograph」は、ストーリーのクライマックスに流れるエンディングテーマです。以下のような「世界一キライなあなたに」を体現するかのような歌詞があります。
「僕らの愛を写真の中に込めて、あのときの思い出を2人だけのものにしよう。写真の中では瞳は永遠に閉じないし苦しい思いをすることもない。時間は永遠に止まったままだからね」
出典:https://justice-destroyer.com/english_songs/lyrics_photograph/
たとえ死ぬことになろうとも、愛だけは永遠にお互いのものだということを感じさせる曲です。
次の項目から、「世界一キライなあなたに」の高評価レビューと低評価レビューを、それぞれ3つずつ紹介していきますね。
「世界一キライなあなたに」の高評価レビュー
想像していたようなストーリー展開ではなかったですが、ありきたりでなくて、キレイごとで終わらなかったことで、「観て良かった」と思わせられました。
主役の女性は見たことがなかったのですが、男性のほうは『あと1センチの恋』に出ていました。
’生きること’の意義、’尊厳死’について考えることに一石を投じるいつもと少し違うラブストーリーでした。
その割には重たくはなく、でも結果心に軽いわけでもなく…
少し不思議な、微妙な気持ちになる映画です。基本的にはとても素敵なラブストーリーで、主人公がキュートで見ているこちらもなんだか笑顔になるような作品です。
でも、何度も涙をぬぐいながら見ていました。他の方も書かれているように、「最高の二人」のまねかな~と思いながらもでも単純に面白いので、観進めていくうちに、伝えたい事は別にあるのだと気づきました。
確かに自死自体はいいことじゃない。ただ、体が動かない辛さは本人じゃないと分からない。
これから何十年も、死ぬまで体が満足に動かないとしたら、、、私にはその辛さが分からない。そうなってないから。
人の人生は人が決めていいことじゃない。残された人が辛い想いをするのは分かるけど、その人の人生はその人のもの。
最後、意思を尊重して最後まで側に居ることを決めた主人公が素晴らしい人に見えました。
出典:amazonco.jp prime-世界一キライなあなたに(吹替版)-カスタマーレビューより
単純なラブストーリーではなく、尊厳死というテーマを扱っているため、ありきたりなラブストーリーとは違った楽しさを味わえたという口コミが見られました。
よく「最強のふたり」と比較されがちですが、「最強のふたり」は男同士の友情物語のため、作風が異なります。
「世界一キライなあなたに」は尊厳死という重いテーマの割には、明るい作風ですので、暗い気分にならずにこの作品を味わえます。
「世界一キライなあなたに」の低評価レビュー
最悪でした。元の自分に戻れないから自殺するなんて。それを容認する周囲の人たちも、生きることを舐めすぎです。
五体満足で楽しく生きることが人生ではない。どのような境遇でも、そこから何を学ぶかが重要なのでは?
主人公なんて、ちゃんと会話は出来るし、行きたいところに連れていってもらえるし、愛してくれる人達がいるし、何も障害なんかではありません。
私の周りの大切な人たちはもっと大変な状況で前向きに生きています。障害=悲惨という健常者目線の、そのことこそ悲しくなるような偽善映画でした。
主人公の行動が、身の丈にあった生活と彼氏を捨てて、金持ちの男を取ったように見えてしまう。自分勝手でおばかだけど、彼氏なりに恋人を大事にしてるのにね。仕事も頑張ってるし。
行動的で自分勝手に動き回る一般人男性より、自分がいないとなにもできない金持ち!旅行もリッチ!人生リッチ!にしか見えなかった。
あげく拒否されれば車椅子を浜辺に放置でどっか行くし、君の方が勝手すぎるわ!と突っ込んでしまった。
「最強のふたり」のようにシモの世話からなにからやってるわけじゃないですし、結局金持ち相手のコンパニオンでしかない主人公に他人の人生を変えさせることなんてできないよなあとしみじみ思ってしまう
7年付き合ってる彼氏がいながら仕事と称して浮気旅行する映画です。仕事に徹するなら分かります、または、切り出された時点で別れていないと、この女に共感できません。
一番かわいそうなのは浮気されてるのに旅行を認めた彼氏。感動できるはずありません。
出典:amazonco.jp prime-世界一キライなあなたに(吹替版)-カスタマーレビューより
ウィルが以前の生活に戻れないから自死を選ぶという姿勢に、否定的な口コミが多く見られています。
尊厳死という賛否が割れてしまうテーマを扱っているので、自死の選択が命を粗末に扱っていると批判的な見方をしてしまうのも仕方ないでしょう。
また、ルーの彼氏のパトリックがかわいそうだという意見もありました。ルーがウィルとの関係が上手くいくほど、パトリックが微妙な立ち位置になってしまうのは、なんだか残念になってしまいますよね。
「世界一キライなあなたに」の総評
「世界一キライなあなたに」は、ラブストーリーの中に尊厳死という重いテーマも扱っている映画です。明るい作風で、最愛の人との人生の選択を考えさせられる点が評価されています。
その一方で、尊厳死という自ら命を絶つことは命を粗末にしているという評価もされていて、作品の結末まで観ることで、この作品をどう評価するかが人によって大きく変ってきます。
尊厳死という賛否両論になりがちなテーマをあえて扱い、見た人に一石を投じる姿勢は評価できます。
「世界一キライなあなたに」の作品情報
- 【監督】― テア・シャーロック
- 【吹き替え版声優】― ルイーザ(ルー)・クラーク(清水理沙)、ウィル・トレイナー(綱島郷太郎)、カミーラ・トレイナー(塩田棚子)、スティーブン・トレイナー(金尾哲夫)、ネイサン(山口太郎)
- 【公開日】― 2016年
- 【上映時間】― 110分
- 【視聴方法(2019年7月時点)】― amazon prime video(吹替・字幕)、dTV(吹替・字幕)
- 【amazon prime videoの評価】― ☆☆☆☆☆(4.2点)
- 【映画.comの評価】― ☆☆☆☆☆(3.8点)
なお、「世界一キライなあなたに」には続編小説の「after me (2作目)」と「still me(3作目)」があります。
残念ながら翻訳されていませんが、ネットで調べればおおよそのストーリーが分かるので、今作を見終わったら調べてみて下さい。
今作には字幕版と吹き替え版の両方があり、私は吹き替え版を見ました。元の雰囲気を壊さずに声優さんたちが演じているので、特に違和感なく楽しめました。
吹き替え版の方がよりウィルとルーの気持ちが伝わりますので、私なら吹き替え版をおすすめします。
まとめ
ここまで、「世界一キライなあなたに」を一部ネタバレありで紹介していきました。
一見、純粋なラブストーリーかと思われがちですが尊厳死というテーマを扱い、人の命と意志に一石投じた作品となっています。
作品の結末は、未だに賛否が渦巻いています。結末を良い方向に取るか、悪い方向に取るかはあなた自身の目で確かめて下さい。
最愛の人が自分の意志で死にたいと望むなら、あなたならどう決断できますか?