「「おくりびと」か。確か、「納棺師」をテーマにした作品だよね。どんな映画なんだろう。」
「おくりびと」は「納棺師」をテーマにして、人の死を中心に命について前向きに考えさせられるストーリーです。
この記事では、「おくりびと」を一部ネタバレありで紹介していきます。この映画をきっかけに、死について考え、命を大切にしていくことを感じ取っていただけたら嬉しいです。
物語の核心部分は伏せていますので、どうか安心して下さい。
アイキャッチ画像出典:https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E3%81%8A%E3%81%8F%E3%82%8A%E3%81%B3%E3%81%A8%E3%80%8D%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%B8%E3%83%8A%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF-%E4%B9%85%E7%9F%B3%E8%AD%B2/dp/B01N5O3N9J
「おくりびと」のあらすじ
「年齢問わず、高給保証!実質労働時間わずか。旅のお手伝い。NKエージェント!!」 この求人広告を手に「NKエージェント」を訪れた元チェロ奏者の小林大悟(本木雅弘)は、社長の佐々木(山崎努)から思いもよらない業務内容を告げられる。その仕事とは、遺体を棺に収める”納棺”という仕事だった。戸惑いながらも、大悟は妻・美香(広末涼子)に仕事内容を偽り、納棺師の見習いとして働き出す。
出典:amazon.co.jp-prime-映画「おくりびと」【TBSオンデマンド】
夢だったチェロ演奏者になってすぐ、解散という事態になり夢破れた大悟。妻の美香と故郷の山形に帰ることになり、たまたま目に入ったのが「旅のお手伝い」という仕事でした。
「旅のお手伝い」というのは、亡くなった人への旅立ちを手伝う「納棺師」のお仕事なのでした。
「納棺師」の仕事を通じて死のかたちを美しく描き、命の別れと新たな旅立ちを描いたヒューマンドラマ映画です。
「おくりびと」の登場人物
ここで、「おくりびと」に登場する人物を3人紹介していきますね。
小林大悟(演:本木雅弘)
大悟は元チェロ演奏者です。夢破れ、妻の美香と山形に帰ることになり、ひょんなことから「納棺師」としての仕事をすることになりました。
何でも自分で抱え込んでしまう真面目な性格の持ち主で、妻の美香に悩みを打ち明けられないこともあります。
最初は、「納棺師」の仕事が自分に向いているか悩んでいましたが、「納棺師」としての仕事は世の中に必要な仕事だと自覚し始め、人の命の旅立ちをお手伝いするようになります。
- 「Shall we ダンス?」 (1996年、本人役)
- 「夜の上海」(2007年、水島直樹役)
- 「日本のいちばん長い日」(2015年、昭和天皇役)
- 「天空の蜂」(2015年、三島幸一 役)
- 「永い言い訳」(2016年、 衣笠幸夫(津村啓)役)
小林美香(演:広末涼子)
美香は大悟の妻で、優しく大悟のことを見守っている女性です。仕事はウェブデザイナーをしています。
突然、大悟が所属していた管弦楽団が解散したことや、大悟がチェロを買うために数千万円の借金をしていたこと、大悟と一緒に山形へ帰ることになっても優しく受け止めていました。
当初、大悟が「納棺師」の仕事をしているのを「汚らわしい。」と受け入れられませんでした。しかし、ある出来事をきっかけに「納棺師」の尊さを感じるようになり、認めていきます。
- 「秘密」(1999年、杉田藻奈美 / 直子役)
- 「バブルへGO!! タイムマシンはドラム式」(2007年、田中真弓役)
- 「ゼロの焦点」(2009年、鵜原禎子役)
- 「終わった人」(2018年、浜田久里役)
佐々木生栄(演:山崎努)
大悟が勤める、「NKエージェント」の社長です。直感で物事を判断し、仕事の面接に来た大悟を直感で雇いました。
普段は多くを語りませんが、心の中では大悟が「納棺師」として働いていることに喜んでいます。言葉ではなく、背中で語る社長です。
- 「大学の山賊たち」(1960年、デビュー作)
- 「続・男はつらいよ」(1969年)
- 「新仁義なき戦い 組長の首」(1975年)
- 「マルサの女」(1987年)
- 「神さまの言うとおり」(2014年、シロクマ役(声優))
- 「長いお別れ」(2019年、東昇平役)
- 上村百合子(演:余貴美子) ― 「NKエージェント」の事務員で、どこかつかみ所のない女性。
- 山下ツヤ子(演:吉行和子) ― 銭湯「鶴の湯」を切り盛りする山下の母親。銭湯の仕事を誇りにしている。
- 平田正吉(演:笹野高史) ― 「鶴の湯」の50年の常連客。銭湯に来てはひとりで将棋をさしている。
- 山下(演:杉本哲太) ― 大悟の同級生。母の銭湯を畳んで、マンションを建てる計画を母に勧めているが、揉めている。大悟の仕事にもあまり快く思っていない様子。
「おくりびと」の注目ポイント
「おくりびと」の注目ポイントは、大悟が仕事をしていくなかで、さまざまな命の終わりに対面するシーンと、食事のシーンです。それぞれ解説していきます。
命の終わりに対面していくシーン
大悟は「納棺師」として仕事をしていく中で、亡くなった人の様々な命と対面していきます。
- 小さい子供
- 10代の学生
- 事故死した10代の若者
- 孤独死した独居老人
- 母親
- キリスト教宗派の親族
様々な終わった命に対面していき、映画を観ている人にも終わった命には様々な形があることを訴えかけていきます。
その終わった命はどこか切なくも、今を生きる人たちに何かを伝えているかのようでした。
食事シーン
「おくりびと」には作中で美味しそうに食べ物を食べる、以下のようなシーンが随所に見られます。
- 大悟と美香との日常の食事シーン
- 社長とフグの白子を食べるシーン
- クリスマスの日、事務所で社長と事務員と一緒に大悟が骨付き肉にかぶりつくシーン
- 仕事終わりに、車内で社長と干し柿を頬張るシーン
日常の食事シーン以外は、どれも「むしゃむしゃ」「ぽりぽり」と、無心で食べている様がいかにも美味しそうです。
食事に関するシーンは、脚本を手がけた小山薰堂のこだわりで「いのちを頂く感覚」を徹底したんだそうです。
「おくりびと」で使われた曲
「おくりびと」は、作中に渡ってチェロによる曲と、オーケストラの曲がふんだんに使われています。それぞれ解説していきます。
作中で流れるチェロの曲
大悟がチェロ演奏者である設定から、チェロによる曲が多く使われています。チェロの曲は久石譲が手がけました。
特に、作中で流れるメインテーマとも言える「Ave Maria~おくりびと」は、優しくもあり、時には激しさを感じさせるかのような曲です。
随所に聞かれるオーケストラ曲
チェロを中心とした曲以外にも、以下のようなオーケストラの曲が使われています。
- 「ベートーヴェン交響曲第9番第4楽章543小節」
- 「バッハ作曲/グノー編曲「アヴェマリア」」
- 「ブラームスの子守歌」
大悟がオーケストラ団員で演奏するときに流れたり、社長と事務員と一緒にクリスマスを楽しむ時に流れたり、大悟が美香にチェロを聞かせる時に流れる曲などで使われています。
シーンごとに流れるオーケストラの曲は、映画を観ている人にどこか優しさを感じさせます。
次の項目から、「おくりびと」の高評価レビューと低評価レビューを3つずつ紹介していきますね。
「おくりびと」の高評価レビュー
評判は聞いていたが、これほど面白いとは思わなかった。たった2時間で、こんなにも感動することになるなんて。
死ぬことを通して、生を描く。自分らしく生きる、というテーマの映画はいくつも観てきた。それらの作品から勇気をもらい、前向きに生きることの素晴らしさを教わった。
しかしこの作品は、死を真正面から描くことで、きちんと生きるための覚悟を与えられたように感じる。とか、そんな理屈はどうでもよい。とても面白い映画だった。
見ようと思いなかなか見れなかったのですが、やっと見ることができました。自分の仕事はペットの葬儀関係で、この映画をみて勉強と何か得るものができればと思いました。
私は旅立ちでお見送りのお手伝いをすることに誇りを持っていますが、この映画にも共通する所と心があり思わず涙がでました。
私もまだまだ未熟ものですから、この映画も一つのきっかけとしてこれからも旅立ちのお手伝いができれば
と思っています。有難うございました。
両親を亡くした時を思い出して辛くなるかなと思っていました。見てよかった。温かい気持ちになれました。
泣きました。でも悲しい涙ではありませんでした。大切な人を亡くした亊のある方に見てほしい作品です。
映画を通して、普段意識することのない「死」について考えさせられた、という意見が多かったです。
死というテーマは重くなりがちな内容ですが、「おくりびと」では、見た人を「前向きに生きよう」と感じさせてくれる作りになっていますよ。
おおむね、死について肯定的に捉えられた人には高評価を得ています。作風も重くなく、明るくストーリーが進んで行きます。
「おくりびと」の低評価レビュー
受賞もしてるし題材が素晴らしいので、当然のごとく買ってしまいました。
が、正直なところ…非常にあっさりしていてとぎれとぎれにつなぎ合わせているような流れが非常に物足りなさを感じ、かつ終わり方もすっとしていて、そんなに騒ぎ立てるほどの作品かな?
とさえ思ってしまいました。元になった本を読んだ方が、よさそうな感じ。。。前評判に踊らされてしまったなという印象です。
おくりびと、死に化粧のお兄さん達の話ですが正直言うとあまり感動出来なかった。が、リアリティはある。死に化粧をし亡くなった人を送り出す人達の話なのでまぁ言っちゃえばそれまでの話である。
仕事上、日常茶飯事なのでもっと強烈な遺体とか死因とかが合っても良かったのではないだろうか。最初の若いお姉さんは自殺ですがそれもあんまり衝撃でも同情もしなかったかな・・
そもそも亡くなった人が中年でも美女の人や中年の男性でなんかただ人の死を美としてしか映さないのはむしろ侮辱じゃないのかな。私はいろいろな遺体を見てきてるから。
遺族との話や主人公の人生の話などもあるがあまり感情は動かなかった。
この監督は、身近な人の葬儀に立ち会ったことがないのでしょうか?映画を見て思ったことは、とにかく綺麗な部分だけ映してるように感じました。
本当の葬儀って、もっとドロドロしてます。どうでもいいことで親戚がいがみ合ったり、知らない人の心遣いに感謝したりしました。
自分自身、お骨を拾うときに手が震えて止まらなくて、もう片方の手でふるえを抑えて何とか拾えた経験があります。
そこまでいかなくても、もっと死について考えさせて欲しかったです。これじゃあ、単なる納棺士の宣伝映画です。
高評価・低評価レビュー出典:amazon.co.jp-prime-映画「おくりびと」【TBSオンデマンド】
実際に死に立ち会ったという視聴者からは、本当の葬式場面はこんなに単純なものではなく、もっとドロドロと複雑だという意見がありました。
また、人の死について美化しすぎているという意見も見受けられました。確かに、現実の死とは美しいものだけではないので、リアリティを求めすぎるとどこか物足りないのかもしれませんね。
あくまで、死をテーマとして生きている人を前向きにさせる作風なので、シリアスな展開を求める人には物足りないでしょう。
「おくりびと」の海外からの評価
「おくりびと」は、日本で「第32回日本アカデミー賞最優秀作品賞」に選ばれ、さらに「第81回アカデミー賞外国語映画賞」を受賞しており、海外から評価されています。
「納棺師」という日本独自の文化が荘厳なもので美しいと、海外の視聴者は評価しています。
アメリカ人で「おくりびと」を観た人曰く、アメリカでは葬式において、火葬場まで見届けるのはないということです。また、骨上げをして収骨をすることもしないので驚いたとのことです。
なお、「おくりびと」の海外でのタイトルは「departure」となっています。「旅立ち」という意味で、生きている人が、亡くなった命を送っていくという意味が込められています。
「おくりびと」の総評
「おくりびと」は、死というテーマに真正面から向き合い、美しく描いたことから評価されています。明るく、前向きに生きる気持ちにさせてくれる映画です。
一方で、死を美化しすぎているといった声も聞かれています。現実の死は悲しく複雑なもので、映画のように単純ではないという批判もありました。
現実の死というリアルさを感じ取るには物足りないと感じてしまいますが、死という命の儚さと美しさを捉え、残された者を前向きにさせる作品ではないかと考えています。
「おくりびと」の作品情報
- 【監督】― 滝田洋二郎
- 【脚本】― 小山薫堂
- 【公開日】― 2008年
- 【上映時間】― 130分
- 【視聴方法(2019年7月時点)】― amazon prime video、youtube、U-NEXT
- 【amazon prime videoの評価】― ☆☆☆☆☆(4.2点)
- 【映画.comの評価】― ☆☆☆☆☆(4.1点)
各サイトで配信されているものは、劇場で観た人によるとカットされたシーンが多いという報告が挙がっていました。
カットされたシーンも踏まえて全て観たいなら、DVD版をおすすめします。
「おくりびと」に登場する「納棺師」の実際の仕事とは?
「おくりびと」を観て、「納棺師」の仕事に興味を持つ人もいますよね。私の知人も「おくりびと」を観て、葬儀屋で働くようになりました。
実際の「納棺師」としての仕事内容や、待遇面などについて解説していきます。
「納棺師」の仕事の流れ
「納棺師」の実際の仕事は、おおまかに以下の流れで仕事をしていきます。
- 【ご遺体への着付け】― ご遺体に衣装の着付けを行う。宗派によって衣装は様々。
- 【身支度】― ご遺族に身支度を手伝うようお願いする。ご遺体に装束を着せ、旅立ち用の身なりにする。
- 【納棺】― 身支度を終えたご遺体を、仰向けにして棺の中に納める。この時もご遺族に協力してもらう。
- 【副葬品】― あらかじめ、ご遺体と一緒に棺に納める品をご遺族に確認する。
- 【蓋を閉める】― 一連の作業を終え、棺の蓋を閉める
「納棺師」の待遇面など
「納棺師」の給料は、役職や会社によって異なります。一般的には月収20万円から30万円です。作中の大悟の給料は、月収50万円と高い方です。
「納棺師」になるには資格はいりません。葬儀屋への就職か、納棺湯灌専門業者へ就職をすれば、「納棺師」を目指せます。
なお、「納棺師」の求人は少なく、募集していたとしても中途採用が多いため「納棺師」として就職するのは難しいでしょう。
ここ最近の傾向としては、病院で亡くなっているお年寄りが多くなってきたため、病院の看護師が対応することもあります。
まとめ
ここまで、「おくりびと」を一部ネタバレありで紹介していきました。
「納棺師」というなかなか見ない仕事を通じて、人の死を真っ正面に描き出した、どこか明るくも優しい映画です。
全編を通して見ると、人の命のかたちはそれぞれ違い、終わり方もまた違うんだなと感じてしまいます。
人の死というテーマは、なかなか考えたくもないことですが、この映画をきっかけとして去る命、残る命についてちょっとでも考えてみて下さい。きっと、人生を前向きに生きられますよ。