「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」女性首相の孤独と苦労を描く

マーガレット・サッチャーはイギリス初の女性首相です。超保守的な政治姿勢や固い意志から「鉄の女」の異名を取り、現在まで語り継がれています。

サッチャーは、政治家として活躍しながらも夫と子どもたちを愛していました。「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」では、そんな彼女のプライベートでの苦労や晩年の心境を描きます。

(トップ画像出典:https://eiga.k-img.com/images/movie/57446/gallery/main_large.jpg?1396886407)

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙の概要

伝説の政治家マーガレット・サッチャーが、政界引退し、夫に先立たれた後、過去を回想している様子を中心にストーリーが展開します。

映画の概要
  • 公開:2011年
  • 上映時間:105分
  • 年齢制限:なし
  • シリーズ:なし
  • 主演:メリル・ストリープ

サッチャーを演じたのは、ハリウッド女優のメリル・ストリープです。「プラダを着た悪魔」の上司役と言えばわかる方は、あ~!となる人も多いでしょう。

この映画は2012年アカデミー賞で主演女優賞とメイクアップ賞、ゴールデングローブ賞では最優秀主演女優賞(ドラマ)を受賞しました。

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙の出演俳優

主演のメリル・ストリープ、ベテラン俳優ジム・ブロードベントや、ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズシリーズ」出演のハリー・ロイドなど豪華な俳優陣が登場しています。

メリル・ストリープ(マーガレット・サッチャー)

首相時代と晩年のサッチャーを演じています。政治家の時は凛とした美しい女性でしたが、晩年は夫に先立たれた事実を受け入れられず、夫の幻に支配されていました。

「プラダを着た悪魔」でミランダを演じたメリル・ストリープってどんな人?

2019年5月23日

ハリー・ロイド(若いころのデニス)

サッチャーと出会った頃の夫のデニス役。実業家であり、彼女が政治家になることを応援していました。家事だけの一生で終わりたくない、と言った彼女を心から愛していました。

ジム・ブロードベント(デニス・サッチャー)

晩年のデニス役です。サッチャーが見ている幻として主に登場します。過去を回想する彼女に話しかけたり、アドバイスしていますが、他人から見えていません。

アンソニー・ヘッド(ジェフリー・ハウ)※写真右

サッチャーの歴代内閣で、彼女の右腕として外務大臣、財務大臣など務めました。しかし、冷戦終結後の世界情勢が変化する中で、今までの政治姿勢を崩さない彼女と対立し辞職します。

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙のストーリー

雑貨商の家に生まれたマーガレット(メリル・ストリープ)は市長も務めた父の影響で政治を志すが、初めての下院議員選挙に落選してしまう。失望する彼女に心優しい事業家デニス・サッチャー(ジム・ブロードベント)がプロポーズする。「食器を洗って一生を終えるつもりはない」野心を隠さないマーガレットを、デニスは寛容に受け入れる。双子にも恵まれ、幸せな家族を築く一方で、マーガレットは政治家としての階段も昇りはじめる。失墜した英国を再建する。それは気の遠くなるような闘いだったが、彼女はその困難に立ち向かう。愛する夫や子供たちとの時間を犠牲にし、マーガレットは深い孤独を抱えたままたった一人で闘い続けた……。現在のロンドン。どんなに苦しい時も支え続けてくれた夫・デニスは既に他界した。だが、マーガレットは未だに夫の死を認識していないのか、時折不可解な行動が目立つ。思い出の洪水の中で、デニスの遺品を手に取り彼女は「あなたは幸せだった?」とつぶやくのだった……。

(引用:https://movie.walkerplus.com/mv49413/)

マーガレット・サッチャーはどんな人?

サッチャーは2013年に87歳で亡くなりましたが、現在でも伝説の政治家として名を残しています。彼女のドキュメンタリーが作成されたり、映画化されるほど人々をひきつける理由は何でしょうか?

中流階級初の首相

サッチャーが注目された理由は、イギリス初の女性首相という理由だけではありません。イギリスは身分階級の国家ですので、今までの歴代首相は上流階級、いわゆるエリートから選ばれていました。

彼女は食料品店を営む両親の元に生まれた中流階級出身の初の首相でした。両親は厳格なキリスト教信者で、彼女も強く影響を受けており、特に父親の教えを忠実に守っていたのです。それは政治姿勢にも表れています。

名門オックスフォード大学出身で弁護士資格も持つ

画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1843441?title=%E8%A3%81%E5%88%A4%E4%B8%AD%E3%81%AE%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB1

サッチャーはイギリスの名門オックスフォード大学出身で、化学分野を専攻していました。父親の影響で政治活動にも興味を持ち、企業に就職した後も保守党の活動に参加していたのです。

夫デニス・サッチャーと結婚後に弁護士の勉強を始め、子育てをしながらも試験を突破します。彼女は一時期は弁護士として働きますが、選挙で当選すると弁護士を辞めて政治家としてのキャリアを積みました。

彼女が子育てしながら政治家として活動が出来たのは、夫デニスの支援が大きかったと言われています。

政治家としての功績

サッチャーの政治家としての成果は、現在でも賛否両論あるものの、国民にかつての栄光あるイギリスとしての自信を取り戻させました。彼女が実施した一連の政策は、「サッチャリズム」とも呼ばれています。

労働党と保守党

サッチャーが党首を務めた保守党と野党である労働党は、どんな政党でしょうか。2つの政党の特徴について知っておくと、彼女が行った政策の背景が理解しやすいです。

  • 労働党:支持母体は、労働組合。歴代内閣は企業の国営化や社会保障の充実政策を進めてきた。
  • 保守党:支持母体は、富裕層、中流階級。経済の発展のために社会保障費の削減や税率の引き下げを行った。

イギリスは現在2大政党制で、労働党と保守党に分かれます。長年この2つの政党が政権交代を繰り返しています。(正確には様々な政党がありますが、主にこの2大政党が政権を執っている。)

サッチャーが実施した政策

サッチャーが取り組んできた政策は数多くありますが、知っておくべきものは主に次の3つです。

実施した主な政策
  1. フォークランド紛争の勝利
  2. 公営企業の民間経営への移行、財政支出の削減
  3. 労働組合のストライキ鎮圧

フォークランド紛争とは、イギリスとアルゼンチンで3カ月の間、大西洋にある島々の領有権を争った戦争です。現在両国は国交を再開していますが、現在まで両国の溝を作っている根深い問題です。

イギリスは元々「ゆりかごから墓場まで」という言葉に表現される通り、社会保障を充実させる政策が行われていました。しかし、保障が手厚くなる反面、政府の支出が増え、財政を圧迫していたのです。

さらに、国営企業の増加で企業の倒産危機が無くなり、労働者が働かなくなりました。全国で賃上げを要求するストライキも起き、あらゆる公共サービスが止まって国民の生活が悪化したのです。

画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/1524782?title=%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AD

サッチャーは、このような状況を改善するために規制緩和や公営企業の民営化を実施しました。後々各国で似たような政策が実施されたのは、彼女のやり方を参考にしたものと言われています。

また、国内で異常な力を持っていた炭鉱労働組合のストライキを鎮圧し、歴代首相が勝てなかった労働組合を弱体化させたことも功績の1つです。

「鉄の女」の由来

サッチャーの代名詞でもある「鉄の女」という言葉。皆さんは、なぜ彼女がこのように呼ばれるようになったか知っていますか?

実は、この言葉はサッチャーが保守党党首になった後、ロシア(旧ソ連)の共産主義体制を批判したことに対し、ソ連のメディアが彼女を「鉄の女」と呼んだことで生まれたのです

彼女への批判(悪口の方が正しいかもしれません)のつもりで言ったのに、サッチャーがこの表現を気に入って使用したことで、サッチャー=「鉄の女」と彼女を表現する言葉となりました。

「鉄の女の涙」とは?サッチャーの裏の顔

映画では、サッチャーが自分の意見に従わない議員を切り捨てる冷酷さが描かれています。でもそんな彼女も1人の人間。色んな批判を受けながらも見えない所で、もがき苦しみ泣いてきたのです。

画像出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/245940?title=%E6%B3%A3%E3%81%8D%E5%B4%A9%E3%82%8C%E3%82%8B%E5%A5%B3%E6%80%A7

サッチャーの奮闘、家族との衝突

たびたび彼女が1人で悩んだり、決断を迫られるシーンが登場します。イギリス首相としてリーダーシップを発揮しながらも苦渋の決断を何度もし、孤独に奮闘していたことがうかがえます。

一方で、家族との時間が取れないことに悩んだり、デニスや子どもと意見が合わず衝突することもあったようでした。

フォークランド紛争では、亡くなった兵士の一覧を見て涙を堪えながら、犠牲になった家族へ手紙を書いています。政治家ではなく、家族を愛する母親としての一面も垣間見えるシーンです。

小さい子どもたちを自宅に置いて出かけるシーンは、サッチャーの家族と過ごしたい気持ちを無理矢理抑えているようで、個人的に切なくなりましたね…。

政界引退まで

彼女は10年以上保守党党首、首相として在任しましたが、超保守的な政治に労働党だけでなく、味方の保守党からも反発する議員も出ます。

冷戦が終結し世界情勢が変化する中、彼女は今までと同じ妥協を許さない政治体制を主張したため、他の政治家や財界との温度差が広がっていきました。

そのような中で保守党の党首選が行われ、サッチャーは対立候補に勝利しますが、得票数では差をつけられず、2回目の投票が行われる…予定でした。

1回目の党首選を見て、夫デニスが辞任することを勧めました。そして彼女は潔く政界から引退します。

サッチャーの晩年

政界引退後、夫デニスにはガンで先立たれ、彼女自身も認知症にかかりました。

晩年彼女がどのように過ごしていたのか詳細は不明です。認知症になったことも娘から公表されました。(映画での彼女の症状は、あくまでフィクションですので、事実ではありません)

2013年に彼女は87歳という高齢で亡くなりました。葬儀では、エリザベス女王、各国の首相や政治家など多くの人が彼女の死を悔やみました。

エリザベス女王が葬儀に参加したのは、チャーチル元首相以来のため、それほどサッチャーがイギリス全土に影響を与えた人物だとわかります。

しかし、一方で彼女の政策に苦しんだ一部の国民からは、彼女の死を喜ぶようなコメントが出されました。国民から熱狂的な支持を受けた反面、死してなお恨まれるのは悲しいですね。

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙の評価・コメント

映画の内容がサッチャーの政治家としてではなく、彼女のプライベートや晩年の様子がストーリーの中心だったため、物足りない、彼女の政治内容についても描いてほしかったなど、評価はイマイチでした。

  • Amazon:3.7(レビュー:84件)
  • Yahoo!:3.47(レビュー:376件)
  • 映画.com:3.2(レビュー:56件)

良い評価・悪い評価のレビュー

低評価のレビューによく見られたのが、「サッチャーやイギリスの前提知識を知らないで見ると、全くわからない」です。

高評価

低評価が多いようですが私はすばらしい作品だと重います。英国初の女性首相としてさまざまな向かい風と戦い続けた強い女性の生き様が鮮明に描かれています。己の信念と国民への愛に突き動かされてどんな批判にも屈せず正しいことを正しいと信じ続けるということは美徳であると思いました。

また、夫への一途な愛も切なく、また美しいと感じました。シンプルかつ繊細。よい作品だと思いますよ。

(レビュー引用:https://eiga.com/movie/57446/review/all/2/)

低評価

今回もまったく予備知識なく映画に臨んだのですが本国では当たり前の史実が、日本人には馴染みが薄いだけでなく一時間半強しかない上映時間の中で時代がどんどん進んでいくので、消化できないまま置いてけぼりです。というよりあっと言う間に首相になっちゃいます(笑)

本作は特に感じますが、彼女の一生涯を描くのであれば上映時間は2時間以上は欲しいです。また政治的な背景とプライベートをもっと詳細に描いて欲しかったです。

普通の評価

政治の世界に足を踏み入れるとき、党首選に出馬するとき、フォークランド紛争、ユーロ不参加、人頭税導入、政界引退など、一つ一つの決断の背景があっさりとしか描かれていないのに、引退してからどうしてそんなに過去に引き戻されるのか、夫の亡霊に怯えるのか、この映画は全く説明できていない。ストリープの渾身の演技は高く評価すべきだけど(老人の動作をきっちり演じているところなんか凄い)、残念ながらそれ以外に見るべきところは少ないように思います。

(レビュー引用:https://eiga.com/movie/57446/review/all/2/)

サッチャーが首相に就いていた時のイギリスの知識がないと内容を深く理解することは難しいです。映画を見る前に、サッチャーの政治や出来事について予習をすることをおすすめします。

私も映画を見る前に当時のイギリス政治について簡単に予習をしてから見ましたが、何も知らないで見ると1人の女性の一生に見えてしまいました。

また、この映画が公開された当時サッチャーは存命でした。彼女の病状を作品中で描いていたため、その表現の仕方にも批判があったのも評価が分かれた原因でしょう。

サッチャーを深く知るためのおすすめ本

映画を見る前にサッチャーについて勉強したい、彼女がどんなことをしたか知りたい!という人のためにおすすめの本を紹介します。

学研から出版されている「時代を切り開いた世界の10人」というシリーズの第5巻が、サッチャーの紹介でした。小学生~中学生向けの本ですが、彼女のことを全く知らない!という人にとっては読みやすいです。

私も予習でこの本を読みましたが、経済や税金、政治について専門用語をあまり使わずに説明しています。また、専門用語もわかりやすく説明しているので、スラスラ理解することが出来ました。

「時代を切り開いた世界の10人」シリーズでは、他にスティーブ・ジョブズ安藤百福(日清の創業者)手塚治虫など戦前から戦後にかけて活躍した実業家や芸術家を中心に出版されています。

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙を見た感想

多くのレビューにもある通り、前提知識がないとサッチャーがどのような経緯で政治家になったのか、なぜ数々の政策を実施したかがわかりづらいです。

彼女の考え方や政治姿勢は、父親の影響が大きいと言われますが、この描写が詳しくあると彼女の政治方針が理解しやすいと感じます。

ただ、彼女の生い立ちから首相時代、政界引退まですべてを説明するのは難しいので、あくまで彼女を知るきっかけとしては、良い作品でしょう。

印象に残っているのは、サッチャーが夫デニスの幻想と別れをつげ、思い出の品を全て捨てたシーンですね愛する夫の幻から離れ、孤独になることを選んだ彼女の思いが伝わります。

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙を視聴するには?

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まとめ

今回は「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」を取り上げました。私は大学生の時に政治に関する授業で、サッチャーについて学びましたが、映画を深く理解するためにあらためて勉強し直しました。

当時は何とも思っていなかった彼女の政策を見直すと、「国民が普通に暮らせるように」という思いで実施されていたように感じました。やり方に問題があったかもしれませんが…。

「鉄の女」と呼ばれながらも、家族、国民のために涙を流してきたマーガレット・サッチャー。こんな伝説の女性首相は、今の日本で誕生するのでしょうか?

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シドニー

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