買収を仕掛ける側と、仕掛けられる側の攻防を描いた、映画『ハゲタカ』をご紹介します。この作品は私がどハマりした映画です。
骨太の社会派映画が好きなあなたも、人間ドラマが好きなあなたも、きっと楽しめる作品です。
映画情報や、ロケ地、ストーリー、キーアイテムなど、この映画の見所をお伝えしています。ぜひ最後まで読んでくださいね。
映画『ハゲタカ』の概要
この映画はバブル崩壊後、弱体化した日本企業の外資による買いたたきをテーマに描いて人気を博した、NHKのTVドラマ『ハゲタカ』の続編です。
2000年あたりから急増した中国のグローバル戦略による対外投資や、2008年に世界的金融危機の引き金となったリーマンショック。このような世界経済の流れをベースに、この映画は作られています。
非情な金融世界の人の獰猛な行動と、その内面の心情がとても繊細に描かれていて、大森南朋さんや、玉山鉄二さんの演技が光る見応えのある映画です。
『ハゲタカ』とは、ハゲタカファンド=バイアウト・ファンドの通称です。
『バイアウト・ファンド』とは、投資家に利益を還元することを目的とした投資ファンドです。
投資家から資金をあつめ、50%以上の株式を取得して経営に関与する株式価値を上げて株を売却することで利益を得ています。
映画『ハゲタカ』のキャスト・スタッフ・製作情報
出演と役名
- 大森 南朋…鷲津ファンド代表・鷲津 役
- 柴田 恭平…アカマ自動車役員・芝野 役
- 玉山 鉄二…ブルー・ウォール・パートナーズ代表・劉(りゅう) 役
- 高良 健吾…アカマ自動車、派遣工・守山 役
- 栗山 千秋…ニュースキャスター・三島 役
- 松田 龍平…アカマ自動車代表取締役社長・古谷 役
スタッフ紹介
- 監督:大友啓史
- 脚本:林宏司
- 音楽:佐藤直紀
- 原作:真山仁 『ハゲタカ』『ハゲタカII』(講談社文庫)『レッドゾーン』(講談社刊)
- 製作:冨山省吾
- 制作プロダクション:東宝映画
製作情報
- 上映時間:2時間14分
- 公開:2009年
ロケ地
- マンダリンオリエンタルホテル東京(劉が宿泊)
- フォーシーズンホテル丸の内(鷲津が宿泊)
- 丸の内鍛冶橋駐車場(鷲津と劉の対話)
- 常盤橋公園(映画の終盤にでてきます)
- 台湾(ドバイも湖南省の場面も、海外ロケはどうやら台湾で行われたようです)
映画『ハゲタカ』のストーリー
中国系投資会社ブルー・ウォール・パートナーズの劉(りゅう)(演・玉山鉄二)は、中国のグローバル戦略の一環として、日本企業、アカマ自動車買収を中国政府系ファンドCLICより指示されます。
この敵対的買収を阻止したい、アカマ自動車役員の芝野(演・柴田恭兵)は、天才的投資家、鷲津ファンド代表の 鷲津(演・大森南朋)に助けを求めます。
最初協力を拒んでいた鷲津も、結局買収阻止に協力すべく立ち上がります。しかし、中国政府の資金力には敵わず、鷲津ファンドは次第に不利な立場になります。
窮地に立たされた鷲津、彼はどうやってピンチを切り抜けるのでしょうか。
映画『ハゲタカ』を読み解くキーアイテム=『アカマの赤い車』
映画『ハゲタカ』では、冒頭のシーンから、ラストに至るまで、『アカマの赤い車』が物語の要所にでてきます。この『アカマの赤い車』はこの映画のキーアイテムです。
物語の設定、登場人物の心情、未来への暗示など、この映画の様々な場面で、映画を物語るメタファーとして使われます。
このキーアイテムがどのように映画で使われるのかを見てみると、より映画が面白く見れると思います。順をおってご紹介しましょう。
映画『ハゲタカ』の冒頭・『アカマの赤い車』と少年の原風景
映画の冒頭、中国のどこまでも広い、閑散とした平らな畑が写されます。そこで農作業をする貧しそうな親子。
その畑には一本道が通っていて、そこへ一台の赤い車が颯爽と通り抜けていきます。農作業をしていた少年は、立ち止まってずっと走り去っていくその車を見つめるのでした。
『アカマの赤い車』が少年の心に火を灯すこのシーンは、後に中国系投資会社ブルー・ウォール・パートナーズの代表として、アカマにTOB(敵対的買収)を仕掛ける、劉(りゅう)の原風景として描かれています。
この時『アカマの赤い車』は、豊かさの象徴や少年の憧れのメタファーとして登場します。
映画『ハゲタカ』の『アカマの赤い車』は日の丸か?
次に新車発表の場面で、『アカマの赤い車』がスポットライトを浴びて登場します。
アカマ自動車はその技術力の高さで定評がある、日本を代表する自動車メーカーです。しかし、その実、業績不審が続き四苦八苦しているという設定です。
このアカマ自動車の置かれている状況は、日本の状況と重なります。
「アカマ」にルを足せば「アカマル」。日本国旗を連想しますね。つまり『アカマの赤い車』は日本国のメタファーではないかと私は考えます。
映画『ハゲタカ』の終盤・それぞれの『アカマの赤い車』
『アカマの赤い車』が登場人物の心情を表したり、日本の現状を表したりしていることは先ほど解説しました。
物語の終盤では、登場人物たちそれぞれの『アカマの赤い車』に対する思いを映し出す演出があります。それは同時に、日本の現状を物語ることにもなっています。
ネタバレになってしまうので、詳しくは話せないのが残念ですが、ラスト近くで、守山(演:高良 健吾)が、颯爽と『アカマの赤い車』」で走り抜けていくシーンが私的には印象的でした。
登場人物、それぞれの思いが『アカマの赤い車』をメタファーにして丁寧に描かれていているので、ぜひ注目してみてください。
映画『ハゲタカ』ここが印象深かった
私の印象に最も深く残ったシーンをご紹介します。劉はTOBを成功させる手段として、会社の労働環境に不満を抱く派遣工の守山を焚きつけます。
守山は労働者を先導して抗議デモを計画しますが、抗議活動を焚きつけた劉本人に抗議デモを潰されてしまいました。劉に利用されたと知った守山は、劉の宿泊先のホテルで「騙したのか!」と劉に詰め寄ります。
詰め寄る青年に対し、400万円の金を出して「受け取れ。」と言い放つ劉。しかし、守山はその金を投げ捨てます。「元いた場所に戻れ。」という劉に対し、守山は怒りを込めて金を投げつけます。
散らばった金を拾い、守山に手渡しながら「拾わなくちゃいけないんだ…!」と劉は守山にいいます。劉の渾身の訴えに心打たれた守山は、金を拾ってはポケットに押し込んでいくのでした。
映画『ハゲタカ』ここが印象深かった理由
なぜ、このシーンが私の印象に最も深く残ったのかをお話します。
劉は最初、守山に対し上から目線で「金を拾え!」と言います。しかし、途中から横から目線で、守山に金を手渡しながら訴えるように、諭すように「金を拾わなければいけないんだ」といいます。
劉はかつて、守山と同じく底辺の惨めさ、社会の理不尽さに泣く貧困家庭の子どもでした。底辺からのし上がるためなら、非合法な手段さえも使ってきた劉の「金」への思いが伝わります。
「底辺の人間が這い上がるには、金が必要なんだ、例えそれが汚い金だろうと、それを土台にして這い上がらなくてはいけないんだ。」という劉の意思が伝わる玉山さん迫真の演技は、とても良かったです。
映画『ハゲタカ』を見よう!
ここまで映画『ハゲタカ』のキャスト、ストーリー、見所をご紹介してきました。『ハゲタカ』はとても良い映画なので、ぜひ見てくださいね。
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映画『ハゲタカ』のまとめ
映画『ハゲタカ』は、金融市場に代表される資本主義社会の、喰うか喰われるかの獰猛な世界と、そこで生きる人間の複雑なメンタリティを丁寧に描いています。
エンターテイメントとしても楽しめる一方、社会において、金と人間の価値を問いかけながら、底辺の人はもはや物扱いになっている日本の社会の現状も風刺しています。
日本はモノ作りに対しても、人に対しても誠実ということに誇りを持っていました。しかし、昔ながらの価値観にしがみ付いていたら、競争が激化する現代社会では生き残れないという現実があります。
けれどその誠実さにこそ、価値があるもので「それを簡単に捨ててしまって良いのか?」ということもこの映画は問いかけます。金融の世界を舞台に、様々な人間模様や価値観が交差するのが、この映画の魅力です。